チャレンジは見返りを生む

 チームワークの進化を観察して20年経つが、チーミングは個人や企業がいま実践すべきものではなく、いまや「実践してみたい」と考えるべきものとなったと思う。なぜなら、チーミングは個人や組織の成長において重要な原動力となるからである。

図表「チーミングによる報酬」
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 うまくマネジメントされたチーミングは、〈RAZR〉やウォーター・キューブの例で見たように、あっと驚く成果を短期間に上げるだけでなく、長期的にも利益がある(図表「チーミングによる報酬」を参照)。チームの動かし方を学んだ組織は、より機敏になり、イノベーションの力もつく。

 そうした企業は、事業領域を超えた複雑な問題を解決し、よりまとまりのある強力な企業文化を育てることによって、部門や社員の調和を図る。そしてさまざまな製品とサービスを提供し、予期しない出来事にもうまく対処する。

 チーミングにより、企業はプロジェクトの実行が助けられ、また複数の分野から学べる。さらに実行の質の改善にもつながる。

 個人レベルでも、何度もチーミングに参加すれば、知識は増え、対人スキルも上がる。またコラボレーション候補者との人脈も広がり、自社に対する理解が深まり、社内に存在する違う文化についても認識するようになる。

 同僚とともに複数の製品開発チームを調査、比較したところ、より大きな課題に直面したチームのメンバーのほうが、学びが深いことが明らかになった。より大きな課題とは、タスクが前例のないものだったり、製品が複雑であったり、メンバーの多様性が大きかったり、さらに違いの度合いが高かったりということである。

 多国籍食品企業のダノン・グループは、チーミングの力に大きな信頼を寄せており、実際に「ネットワーキング・アティテュード」として組織化している。このプログラムは、フランク・モーギンとベネディクト・ベナーティという経営幹部が立ち上げたものだ。同社の事業ユニットは数百に分かれ、経営も別々である。各ユニットに散らばって、ほとんど関わりもなかった社員たちを、必要に応じてプロジェクトに巻き込むプログラムなのだ。

 マネジャーたちは、「ナレッジ・マーケットプレース」で相手の顔を見たり、あるいはオンラインで議論したりして、自分が特に関心を持つテーマやブランド、問題について、実践方法(プラクティス)を共有したり新しいプロジェクトを一緒に立ち上げたりする同僚を探すことができる。社内報告書では、国や部門の枠を超えた33のプラクティスが紹介された。ダノンはこれらのプラクティスから新しいイニシアティブが立ち上がることに期待する。

 ダノン・フランスが競合他社の動きに先んじて3カ月以内にあるデザート食品を発売する必要に迫られた時には、ダノン・ブラジルが応援し、売上高2000万ユーロの事業となった。チーミングに参加したメンバーは風通しのよいコミュニティを世界じゅうにつくり、新しい「ネットワーク」の数は現在60を上回る。

 ネットワーキング・アティテュードの本来の目的は事業の成功にあり、目的は達成された。しかし同様に重要なのは、これによって、それまで国ごとの垂直的な意思決定という文化が姿を消し、水平方向のコラボレーションという文化が現れたことである。

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 従来のチームワークよりも雑然としているが、これからはチーミングの時代だ。プロジェクトには、以前よりも多くの分野からの情報と各分野での精緻なプロセスが求められている。また、マネジャーは意思決定とタスクの遂行のため、あらゆる種類の専門家の力に頼っている。不確実で複雑な事業環境で抜きん出るためには、これまでにない新しい方法での協力が必要である。

 現に、成功するチーミングとは、未知なるものを受け入れ、学びに専念させることに駆り立てるところから始まる。それが社員たちを、タスクを遂行しながら、新しい知識を吸収し、時には創出することに駆り立てるのだ。

編集部/訳
(HBR 2012年4月号より、DHBR 2012年9月号より)
Teamwork on the Fly
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