帰国後にメディアによる扱いの差を、ファンからかけられる声の違いを何度も痛感させられた。メダルを獲ることがすべてではないが、その競技が発展していくか否かが、メダルの有無に左右されることも少なくない。福岡があえて東京五輪で7人制へ、しかもメダルへ挑む理由がここにある。

「15人制がすごく注目されているのに対して、知名度もまだまだという状況もあって、7人制はメディアでも目にする機会が少ない。それでも、ここで五輪競技として7人制の存在がスポットライトを浴びて、15人制とは異なる存在として独立し、注目されるものにしていくためにも、今回の挑戦で知名度が広まってくれればと思っています。やるからには必ずメダル獲りを目指したいし、そのための努力を続けて、残された時間を最高のものにしていきたい」

 快足を飛ばして4つのトライを決めて、日本代表が史上初めてベスト8へ進出する原動力になったワールドカップ日本大会で15人制の日本代表に。今夏の東京五輪で日の丸を背負う自分に。そして、閉幕時には29歳になる2020-21シーズンのトップリーグで楕円のボールそのものに――心から愛するラグビーとの名残を惜しむかのように、段階的に別れを告げていく。

 東京五輪へのスタートにすえていた熊谷合宿は辞退せざるを得なかった。しかし、だからといって扉が完全に閉ざされたわけではない。今後も定期的に国内合宿が組まれ、4月下旬に都内で開催されるアジアセブンズ招待が、6月に予定される東京五輪代表メンバー発表前で最後の対外試合となる。

「僕はこれでチームを一旦離れますけど、パナソニックワイルドナイツを代表してまずは代表メンバーに入って、オリンピックで活躍できるように頑張ってくる。帰ってきた時にチームが勢いに乗っていればすごく嬉しいことなので、それぞれの場所でお互いに頑張ろう、という話をしました」

 トヨタ自動車戦後に仲間と交わしたやり取りを笑顔で明かしてくれた福岡へ、パナソニックのキャプテンで、日本代表の盟友でもあるフッカーの坂手淳史も熱いエールを送る。

「堅樹が下した選択に対してチーム全員で応援したいし、帰ってきた時には堅樹へ優勝を見せたい」

 空前の盛り上がりを見せるラグビー界へ、ギリギリまで貢献したいと決めたからこそ、合宿辞退に無念さは抱いても開幕2試合へ限定出場したことに後悔はしない。福岡を欠いたパナソニックは、三菱重工相模原にも快勝して首位を走っている。直後にツイッターで「ナイス勝利!」と呟いた福岡はまずは左ひざを完治させ、同時進行で肉体改造に着手しながら、復活の狼煙をあげる瞬間を待つ。