電通vs博報堂。ヤマト運輸vs佐川急便。アップルvsアマゾンetc.
有名企業の決算書を徹底分析! 「儲かっている」のはどっちだ?
本連載は、誰もが知っている有名企業の決算書を対比させることで、「仕事に効く会計知識」と「経営分析の基本」を一気に学ぶものだ。著者は、「監査法人」「証券会社」「ベンチャー企業」「会計コンサル」、4つの立場で「会計」に携わった経験を持つ川口宏之氏。発売4日で重版が決まった『経営や会計のことはよくわかりませんが、儲かっている会社を教えてください!』の著者でもある。

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潜在的な価値を指す「のれん」

 日本企業でもM&Aがさかんに行われるようになったこともあり、「のれん」という言葉を目にする機会が増えています。財務諸表を読み解くのに欠かせない「のれん」についてお話しします。

「のれん」は貸借対照表の資産の部に計上されるものですが、のれんと聞いて普通イメージするのは、店の入り口などに垂れ下がっている布製の暖簾(のれん)でしょう。

 実は会計上の「のれん」も、店の入り口にかかっている暖簾が語源です。有名店の屋号が書かれた暖簾が入り口にかかっていたら、その店の知名度やブランド力でお客が集まる効果があります。

 例えば、創業約500年という非常に長い歴史を持つ和菓子店の「虎屋」の例で考えてみましょう。

 似たような和菓子店が2軒並んでいて、片方の入り口には虎屋の暖簾がかかっており、もう片方にはなにもかかっていない。どちらにより多くのお客さんが来るかといえば、虎屋のほうでしょう。それは、約500年にわたって育まれてきた「伝統」と「信頼」が入り口の暖簾に表れているからです。

 財務諸表には直接表れないけれども、店の暖簾のように、その企業が持っている潜在的な価値のことを「のれん」といいます。潜在的な価値とは、「ブランド」「ノウハウ」「顧客との関係」「従業員の能力」などを指します。

 では、目に見えない価値があればどんな会社でものれんが計上できるかというと、そうではありません。

「我が社のブランド力は5000万円の価値がある」「うちの社員は優秀だから1億円ののれんを計上する!」といっても、その金額に根拠はないでしょう。自画自賛しているだけで、外部から見たら「まったく価値がない」ということもあり得ます。

 そのため、ある事象が発生しないとのれんを計上してはいけないというルールになっているのです。