キャンドル、花束、メッセージ
キャンドル、花束、メッセージなどが地面に置かれていた

 群衆が花束やキャンドルを地面に置き、その最前列では口にマスクをし、中国語を話す旅行者が満面の笑顔でスマホの自撮りをしていた。中国からやってきたファンらしい。その横では1人で静かに泣いているヒスパニック系の女性がいた。

 陽が落ち、闇があたりを包むころ、メキシコ系の人々が運営するバーベキュー屋台があちこちに出され、肉の焼けるジューシーな匂いが漂ってきた。

 ラップ、ヒップホップ、マリアッチと様々な音楽が流れる路上で、男性の物売りがこう叫んでいた。「コービーRIPTシャツ!1枚どう?」。何と、まだ死後何時間も経っていないのに、コービーの似顔絵と「安らかに眠ってください」という意味の「RIP」の文字を印刷したTシャツを売っているではないか。

「いくら?」「1枚15ドルだよ」というやりとりが聞こえた。ポケットから紙幣を出し、実際に購入している少年たちがいた。

「あー!もうコービーをネタに商売してるやつがいる。まったく、資本主義ってやつは!」とそれを見て笑う、別の少年グループもいた。

 そのすぐ隣には「死後、裁きにあう」という看板を掲げて「ジーザス!」と大声で叫ぶ男性がいた。さらにその横には、米国陸軍のユニフォームを着て、屋台のバーベキューを頬張る若い兵士たち2人がいた。

「行け!突破しろ!」
バリケードを破って追悼

 すると突然、その横を黄色いレイカーズのジャージを着た男性が走り抜け、通行禁止のバリケードを突破して、ステイプルズセンターに向かって全速力で駆け出した。それを見た群衆全員がわーっと叫んだ。「行け!!!!突破しろ!」と歓声が飛ぶ中、男性はただひたすら何かに取り憑かれたように走り続ける。

 自転車に乗った警官2人がすぐさま男性を必死で追いかける。もう少しでステイプルズセンターまで到達しそうなところで、男性はブロックを乗り越えられず、複数の警官に羽交い締めにされ、取り押さえられた。

「あー、捕まっちゃったか」「それでもやつは頑張ったよ」という声が飛び、「彼を離してやれ!」という意味の「レット・ヒム・ゴー!」という大歓声がダウンタウンのあちこちから飛んでいた。

 そのステイプルズセンターのネオンの向かい側の高層ビルには、バスケットボールを手に持ったコービーの写真と1978-2020いう文字が印刷された大きな幕が、夜の闇を見下ろすように垂れ下がっていた。

追悼の大きな幕
当日夜、ステイプルセンターの向かいに掲げられた追悼の大きな幕