虐待経験から男性依存の深みに

――きっかけは、中学時代に隣のクラスの男の子に告白されたことだったそうですね。

 そのときの快感が忘れられなかったんですよね。よくドラマや漫画で「君が好きだよ」「大切にするから」なんて男の子が言っているじゃないですか。そんなセリフを現実の世界で聞けるとは思わなかったし。なにしろ、父親のDVで家庭がすさみきっていて、男女の愛などまったく信用していなかったので。

――あらいさん自身も毎日、お父さんの暴力や面前DV、人格否定、さらに性的虐待の危険にもおびえていました。

 当時は学校でも孤独でした。DVのせいで夜まともに眠れないから授業中に寝たりして、先生からは素行の悪い生徒と思われていたし、周りからも変わり者扱い。誰にも悩みを相談できなくて、ますます人が信用できなくなっていました。

――子どもが家庭でどんな目に遭っているか、外からはなかなかわからないかもしれませんね。

 父は外面がよく、PTAの会長をやったりしていましたからね。地域ではゴミ拾いのボランティアまでしたりして、近所のおばさんたちにウケがよかった。それが家では妻や子どもを殴ったり蹴ったり、髪をつかんで引きずり回しているわけです。

――誰もお父さんの本性を知らなかった?

 暴れている音とか怒鳴り声とか、絶対周りに聞こえてるはずなんですけど、「別に、ねえ……」で済まされていたんじゃないですか。「いや、あきらかにDVだから!事件だから!」っていう状態なのに誰も通報しないし、介入しない。

――「男の人なんてそんなものよ」みたいな?

 そうそう。私の生まれ育った町って、東京からそんなに離れているわけではないんですけど、古い土地柄で、昔ながらの男尊女卑の価値観が浸透しているんです。だから余計に逃げ場がなくて。そんなときに男の子から告白され、「自分の魅力や長所を認めてくれる人がいたんだ」と気づいたことは大きかったですね。

――男性といえば暴力で自分を支配しようとする存在だったのに、突然、自分をちやほやする相手が現れた。それは衝撃的な体験でしたね。

 それまで感じたことのないような自信が湧いてくるのを感じました。一方で、そんな自分が気持ち悪くもあって。中学生になると周りの女の子たちが、リップをつけたり、髪をいじったり、急にムラムラし始めるじゃないですか。「いやだいやだ、気色が悪い。自分はそうなりたくない」と思っていたんです。

――女っぽくなるのは気持ちが悪いことだった?

 でも、日々DVでぼろぼろに傷ついた状態に慣れているものだから、心の底では気持ち悪いと思っている状態、望んでいない状態に常に自分を追い込もうとしてしまう。屈折してますよね。

――自分を大切にできないからこそ、男性依存の深みにハマってしまったのかもしれませんね。