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2020年1月19日に日本航空が会社更生法の申請から10年を迎えた。再建フェーズを終え、業績は堅調で、5月には新設した中長距離LCC(ローコストキャリアー、格安航空)の就航も予定する。「挑戦と成長」フェーズに進むJALの課題は何か。(ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)
JALの「フィロソフィ教育研修」
「はじめまして。私の仕事は……」。1月、日本航空(JAL)の研修施設では大勢の社員が集まり、「フィロソフィ教育研修」が行われていた。
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参加者は4~6人ずつ分かれて自己紹介をした後、テーマに基づいたグループディスカッションを行う。メンバーは本社の総合職、運航、客室、整備、空港スタッフや貨物を扱うグランドハンドリング、はたまた関連の旅行会社社員など皆、ばらばらの部門・職種だ。
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役職も異なり、役員と新入社員が同じテーブルに着くこともある。通常業務では顔を合わせない人と共に学ぶことでフィロソフィへの理解と、交流を深めるのが目的だ。
2010年1月19日にJALが会社更生法の適用を申請してから10年がたった。負債総額はおよそ2兆3000億円。事業会社としては戦後最大の倒産だ。
約3500億円の公的資金注入や約5200億円の債権放棄など国を挙げて財政支援が行われた。再建の旗振り役に京セラ創業者の稲盛和夫氏を代表取締役会長兼グループCEO(当時)として迎え、人員を3割削減し、不採算路線から撤退、古い機材を処分するなど大規模なリストラを断行した。
稲盛改革の本質は、「全員参加型経営」の浸透だ。当事者意識が希薄だったJALの役員・社員を改めるため、生き方や仕事に対する心構えを説いた「JALフィロソフィ」を作成し、社内教育を徹底した。冒頭の研修は11年から継続して行い、今回で31回になる。
かつてのJALは「本部が違うと別会社」といわれるほど縦割りの強い組織で、部門間のあつれきや派閥争いを引き起こしていた。フィロソフィという同じ価値観をグループ全員で共有することで、一丸となって目標に取り組む風土改革を進めた。