少し前に「老後2000万円問題」が話題になった通り、「お金」の問題について、なんとかしたいと思っている人は多い。しかし一方で、「投資はわからない」「むずかしそう」「だまされたくない」と思って、投資への一歩を踏み出せない人も、まだまだ少なくない。日本で投資が一般的にならない理由としては、これまで日本の金融機関が顧客の運用の成功よりも自社の利益を優先するという姿勢をとってきたことも大きく影響しているだろう。
それでも、2019年現在、投資信託はだいぶコストの安い良い商品が出てきたが、「ラップ口座」「外貨建て保険」「高利回り債券」「バランス型ファンド」「期間限定の好利回り定期」など、買うだけで損してしまう可能性のある金融商品は、まだ数多く存在する。では、どうすればそうしたあぶない商品に引っかからず、手堅く着実に資産を増やせるのか? そんなあなたにおすすめしたいのが、『お金を増やすなら この1本から始めなさい』(安東隆司著、ダイヤモンド社、12月5日発売)だ。著者の安東氏の肩書は、RIA(アール・アイ・エー、投資助言業者)という聞きなれないものだが、これはアメリカで個人投資家が拡大する担い手になった新しい資格。日本では内閣総理大臣登録を受けた者だけが名乗れるもの。商品販売や売買手数料のキックバックを一切受け取らず、顧客の運用の成功により報酬が増えるという中立的な立場のお金のプロだ。本連載では、同書より抜粋して、世の中に出回る金融商品のワナ、そして、どうすればそうした商品にダマされずに資産運用ができるのかのヒントを提示する。世界基準の運用を知る「運用のプロ」が教える方法とは?

なぜ、このセールストークに乗って<br />バランス型の投信を買ってはいけないのか?Photo: Adobe Stock

金融機関が「バランス型」をセールスするカラクリ

 本連載の第7回で「日本債券」の割合が多く、コストが高い「バランス型ファンド」に投資をしてしまうと、日本債券部分の運用がマイナスになってしまうという事例についてお話ししました。

 復習ですが、バランス型ファンドというのは、株式・債券だけでなく、商品によっては、不動産投資信託など、ほかの商品が入っている投資信託です。ですから、一口にバランス型といっても千差万別。それぞれのファンドの投資対象をちゃんと確認すべきです

 さて、ここでは、金融機関の「バランス型ファンド」のセールストークの裏のカラクリについて、ご説明しましょう。

 投資の初心者が、バランス型のファンドを選んだのは、次の理由が多いのではないでしょうか。

 ・分散投資で複数の資産クラスへの投資が有効だと言われた(そう書いてあった)
 ・リスクは、あまり取りたくない人向けとされている
 ・わからないなら、「バランス型がおすすめ」と言われた(そう書いてあった)

 ひとつの資産カテゴリーに集中した商品セールスは金融機関としては危険です。そのカテゴリーの価格が下がった場合には、すすめた理由を問われるからです。

 また、企業向け無料運用研修を頻繁に開催することは通常ありません。お客様への定期的なフォローが行える体制ではないともいえるでしょう。

 すると金融機関にとって無難な商品セールスは、株式と債券が入っているバランス型ファンドです。

 大きく儲かることはまず見込めないけれど、大きく損をしない「無難な」商品を選んでもらうのが良いと判断するため、この商品をおすすめすることになります。