「85%近くの日本人は中国が嫌い」という調査数字から読み解く真実中国人の日本人に対する印象は大きく改善したが、日中両国の感情面で起きている変化はそれだけではない(写真はイメージです) Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

「93%の日本人が中国嫌い」という
先入観を覆した最新世論調査の結果

 2018年の李克強国務院総理の訪日以来、日中関係は回復基調にあり、中国側も「正常な軌道に戻った」という言い回しをよく使うようになった。来春の習近平国家主席の訪日で関係改善に弾みがつきそうだ。

 両国関係が回復基調にあるのは、世論調査の結果からも見て取れる。今年(2019年)10月24日に特定非営利活動法人 言論NPOが発表した『第15回日中共同世論調査』では、中国側の国民感情がある程度改善した。日中関係が改善していると感じているのは中国側で、昨年の調査でも「両国関係が改善していると考えている人が多い」という結果が出ている。

 筆者は2015年6月に執筆した記事「『93%の日本人は中国が嫌い』という調査数字が中国国内に起こした波紋」の中で、当時中国の国際関係紙『環球時報』に掲載された趙宏偉・法政大学教授の『日本観光の美景と幻想』という記事を紹介した。そこで述べられている「93%の日本人が中国嫌い」という論拠は、前述の『日中共同世論調査』(第10回)の結果を引用したものだった。

『日本観光の美景と幻想』は中国メディアの反響を呼び、ある中国メディアは「よい印象を持っていないことと嫌いは違う」と指摘している。そうした状況に鑑み、筆者は、日中の相互理解にはまず先入観を捨てて一度見てみることが重要だということを述べた。

 それから4年がたち、最新の『日中共同世論調査』によると、中国人の日本人に対するイメージはよくなっている。一方、日本人の中国人観はあまり変わらないが、わずかであるものの少しずつ変化している。これは中国が対日政策の基本としている「民でもって官を動かす(以民促官)」が功を奏しているのではないかと考える。

 筆者は2001年から北京にいるが、実際、中国人の日本に対する見方は変化していると感じる。これまでは、靖国問題など「敏感な出来事」が起こると、中国はメディアを総動員して日本批判を行った。2012年に日本政府が魚釣島(中国名:釣魚島)を“国有化”したときも、激しい日本批判が行われた。