吉田晃敏(よしだ・あきとし)旭川医科大学学長吉田晃敏(よしだ・あきとし)旭川医科大学学長 Photo by Hiromi Kihra

名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを伝える。今回は第25回。「地域格差のない医療」を目指し、遠隔医療のパイオニアとして世界的に有名な吉田晃敏医師(旭川医科大学学長)を紹介する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

中国とロシア、2つの大国に
遠隔医療を輸出する

 日本最北の国立大学である旭川医科大学の学長・吉田晃敏先生は、世界で一番、大勢の人を助ける医師になるかもしれない。

 もともとは凄腕の眼科医。若き日には、ハーバード大学医学部眼科に留学し、網膜剥離の治療で並ぶものなしと称されるスケペンス教授のもと、顕微鏡による網膜剥離や糖尿病網膜症に対する硝子体手術の腕を磨いた。また、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学との共同研究で開発し、特許を取得した網膜血流計(レーザードップラ)は、キヤノンとの共同開発で、世界で初めて非侵襲的に測定できる製品として世の中に出た。

「網膜の研究には39年間、命を懸けて取り組んできました。シェークスピアは『目は心の窓』と言いましたが、僕に言わせれば『目は身体の窓』です。目の血管の状態を診れば、全身の血管の状態が分かります。例えば通常はエコーの専門家が検査しなければ分からない大動脈弁狭窄症も、血流計ならわずか2秒で診断できる」