『豊臣兄弟!』より。織田信長の妹、市(演:宮崎あおい)は、北近江の浅井長政に嫁ぐ (C)NHK『豊臣兄弟!』より。織田信長の妹、市(演:宮崎あおい)は、北近江の浅井長政に嫁ぐ (C)NHK

歴史はエンターテインメント!かしまし歴史チャンネルへようこそ。『豊臣兄弟!』第12回のタイトルは「「小谷(おだに)城の再会」。京都奉行に命じられた豊臣秀吉の様子や、浅井長政に嫁いだお市を訪ねに兄・織田信長がやってくる場面などが描かれていました。このとき、長政の父である浅井久政が、裏で信長に対して不穏な動きをしていました。そもそもなぜ、浅井長政はお市と結婚したのでしょうか。お市が戦国一の美女だったから?それとも……当時の浅井家が置かれていた複雑な状況を紐解くと、この婚姻の「本当の理由」が見えてきます。(かしまし歴史チャンネル/川合章子)

浅井長政とお市の結婚は、政略結婚の典型例

 戦国時代における婚姻は、個人の感情よりも政治的意図が優先されるのが一般的です。北近江を支配する浅井(あざい)長政と、織田信長の妹・お市の婚姻も、その典型例といえるでしょう。

 織田信長が、お市を浅井長政に嫁がせたのは、足利義昭を擁して上洛するためのルートづくりでした。逆に浅井長政側には、どのようなメリットがあったのでしょうか?

 浅井氏はもともと、近江守護であった京極氏の被官でしたが、長政の祖父・浅井亮政の代に台頭し、北近江の実権を掌握したとされています。しかし、この支配体制は強固なものではありませんでした。

 北近江では、海北氏、赤尾氏、雨森氏といった有力国人層が大きな影響力を持っており、いわゆる「浅井三将」と呼ばれるこれらの勢力との合議によって政治が運営されていました。そのため浅井氏は、名目的には領主でありながらも、独断で政策を決定することが難しい立場にあったのです。

 浅井氏の立場をさらに複雑にしていたのが、周辺勢力との関係です。北には越前の朝倉氏、南には南近江の六角氏という有力大名が存在し、いずれに対しても一定の配慮が必要でした。

 また、かつての主君である京極氏の権威も完全には失われておらず、政治的正統性の面でも不安定さを抱えていました。こうした状況の中で、浅井氏は複数の勢力の間に立ち、慎重な対応を迫られていたのです。

『豊臣兄弟!』第11回より。信長の妹、市(左、演:宮崎あおい)と浅井長政(右、演:中島歩) (C)NHK『豊臣兄弟!』第11回より。信長の妹、市(左)と浅井長政(右、演:中島歩) (C)NHK