【ソウル】世界で最も貧しく、孤立した国の一つである北朝鮮にとって、新型コロナウイルスの封じ込めはとりわけ困難な課題のように思える。
北朝鮮は先月、外国人観光客の入国をいち早く拒否した国の一つになった。その大半を占めているのは新型肺炎が発生した隣国・中国からの観光客だ。北朝鮮の国営メディアや外交官によると、北朝鮮を経済的に支える友好国の中国との貿易も停止し、外交官の移動も制限している。北朝鮮では新型ウイルスの感染例は一件も報告されていない。
しかし北朝鮮では新型ウイルスの感染患者を診察・治療できる医療体制が整っていないため、外部との接触を断つ必要があると専門家は指摘する。国連による制裁が実施されており、金正恩朝鮮労働党委員長率いる秘密主義の政権が外国の援助を受け入れるかどうかも分からず、外部からの支援の見通しも立っていない。
北朝鮮の主要国営新聞は新型ウイルス阻止を「国家の存亡」に関わる問題だとしている。
地政学に関するコンサルティング業務を行うストラトフォーでシニア・バイスプレジデントを務めるロジャー・ベーカー氏は新型ウイルスについて「北朝鮮にとっては国家の存続に関わる脅威だ」と指摘した。「北朝鮮の医療体制は新型コロナウイルスのようなものを封じ込めるようにはできていない」
金政権が外部との接触を断っているため、同国にとって極めて重要な国外との貿易や観光も止まっている。北朝鮮を脱出し、現在は中国と北朝鮮両国の住民と定期的に連絡を取っている姜哲煥氏によると、中国との国境では全ての列車の運行が中止され、北朝鮮に入るトラックの走行も停止された。
韓国貿易協会(KITA)によると、2019年の北朝鮮の貿易全体のうち中国との貿易が約92%を占めた。国連制裁の実施以降、韓国は北朝鮮にとって重要な貿易相手国ではないが、7日には北朝鮮に対して積極的に関与する方針を掲げる韓国与党が国会議員に対し、北朝鮮への医療用品の提供を検討するよう求めた。
国営メディアの同日の報道によると、北朝鮮は全国に新型ウイルス対策本部を設置し、「感染を完全に防ぐ」ためのマスクや薬品――新たな抗ウイルス治療薬の開発も含む――の生産を拡大した。