【マクロ経済】
中国経済の停滞著しければ
米豪などの利下げ可能性も
第一生命経済研究所 西濵 徹
新型肺炎発生前の中国経済は、米国との貿易摩擦など国内外の諸要因が影響し、経済成長の減速感が色濃くなっていた。中国経済はもはや輸出主導型ではなく、消費需要の強さに最も左右される構造。この点でも経済成長減速は、雇用や所得の面に厳しさをもたらし、昨年来のアフリカ豚コレラ(ASF)の流行による物価高騰なども相まって、実質購買力の低下と家計消費の伸び鈍化が進んでいた。
この中で発生した新型肺炎は、さまざまな角度から消費市場にマイナスに働く可能性がある。感染拡大抑止の目的での外出制限は、単純に消費活動を鈍化させる。旧正月休暇の長期化で企業の活動が停滞すれば、雇用や所得をさらに傷める。また家計部門の資産における株式の比率は日本よりも高く、株価が低迷すれば消費マインドには逆風となる。
GDP(国内総生産)ベースで世界の16%を占める中国の動向は、世界経済に影響する。消費以外でも、製造業のサプライチェーンが中国を軸に構築されていることから、中国での企業活動の停滞は日本を含む周辺国での減産圧力にもなり、連鎖的に各国の景気を下押しする可能性がある。
新型肺炎による消費や生産の減退は、感染拡大が一巡すれば、逆に反転増となる。だが長期的には、中国が日本の失われた30年と同じ停滞に陥らないかという懸念がある。共通点は生産年齢人口の減少と過剰債務だ。潜在成長力を上げ、長期停滞を回避するには、民間の自由な経済活動をどう制度的に担保するかの議論が避けて通れない。
中国の成長力が鈍化したとはいえ、中国に代わって成長エンジンとなる国がないのも事実。米国など主要国にとっては、新型肺炎による中国経済の停滞が顕著なら、米豪などがさらなる利下げに踏み切る可能性も高まる。