米バイオ製薬大手ギリアド・サイエンシズの幹部チームは、中国のコロナウイルス感染拡大を受け、連日ミーティングを重ね、新型肺炎の新たな治療薬開発へ向け大陸を越えた取り組みに奔走している。
中国で臨床試験が成功すれば、これまでに1000人以上の死者を出し、およそ4万2600人が感染した呼吸器系ウイルスへの効果が証明される初の治療薬となり得る。
明るい兆候もある。特筆すべき例として、ワシントン州の男性(35)はギリアドの治験薬を投与されてから急速に症状が改善し、先ごろ退院した。
マーダッド・パーシー最高医療責任者(CMO)は「当社の長年の経験から、興味深い事例となり得ると理解している」としつつ、偽陽性だった可能性もあり、大規模治験で効果が認められない可能性もあると慎重な姿勢を示した。
この抗ウイルス薬「remdesivir(レムデシビル)」の効果が証明されれば需要は急増する。これに加え、中国の患者760人を対象とする2つの臨床試験と、緊急治療が要請されている患者数人向けに同薬を提供するため、ギリアドは増産を急いでいる。
ギリアド以外にも数社が、コロナウイルス感染症の治療薬開発に取り組んでいる。米製薬大手アッヴィとジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、ウイルスに効果があるか確かめるため中国にHIV(ヒト免疫不全ウイルス)治療薬を届けた。
ギリアドも長年、HIVやC型肝炎の抗ウイルス薬を製造しており、中国で原因不明の肺炎が流行しているとの報告が最初に聞かれた12月下旬からウイルスの感染状況を注視してきた。