実際に、雑誌『WIRED(ワイアード)』の創刊編集長ケヴィン・ケリー氏が、彼の最初のビジネスアイデアの検証にこの手法を使っている。

「低予算旅行向けガイドブックのカタログを販売する」というアイデアの実現性を確認したかったケリー氏は、『ローリングストーン』誌の広告スペースに「低予算旅行向けガイドブックのカタログを1ドルで送ります」という広告を出した。

 実はその時点では、まだカタログもガイドブックもでき上がっていなかった。ケリー氏は、注文が十分に集まらなければアイデアを諦め、注文者の全員に返金するつもりだった。だが、なんとか見込み通りの注文数に達したために、商品化を進めることにした。

 私の「リゾート菜園」も、この手法でプレトタイピングしてみることにする。

「1区画30平米あたり月5000円のリゾート菜園」をうたった架空の申込書を作って、近所の農産物直売所に1日だけおいてもらったら、どうだろう。

 その日に何人が直売所を訪れたかは、直売所の店員に聞けばわかるはず。その人数と申し込み人数を照らし合わせれば、「休日に農産物直売所で野菜を買う人(Y)の、少なくとも10%(X)は、農園管理代行付きのリゾート菜園を1区画30平米あたり月5000円払って利用する(Z)だろう」というXYZ仮説を検証できる。

 だが、ここで気になるのは、架空の申込書で実際に入金までさせてしまうのは、倫理上よろしくないという点だ。また、アイデアを断念したときに、返金したり謝罪したりするのも大変だ。

 かと言って、入金手続きを強いられない申し込みでは、本当にサービスを利用する気があるのかどうかがわからない。ひやかしの可能性もある。

 それならば、入金前にまずメールで申込者の情報を連絡してもらう手もあるだろう。

 自分の個人情報を私に提供することで、「身銭を切る」のに近い意思が確認できるので、実際にサービスを利用する可能性が高いと考えられるからだ。

 本書には、アイデアを具現化するための方法論が、ステップごとに多彩な事例とともに紹介されている。

 良いアイデアがあるが、事業化を進めるべきか迷っている人は、ぜひ本書を参考にしていただきたい。実際に事業化までは考えていなくとも、自分のアイデアがどこまで市場に通用するのか、シミュレートしてみるのも一興だ。

(文/情報工場シニアエディター 浅羽登志也)

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