ダイヤモンド決算報(新春)楽天「送料無料化」を「送料込み」の表現に変更した楽天の三木谷浩史会長兼社長。3月18日から始める方針は堅持した Photo by Hiroyuki Oya

2019年12月期の決算で8年ぶりの最終赤字に転落した楽天。楽天市場の送料無料化問題を巡り、公正取引委員会から立ち入り検査を受けるなど逆風が吹く中で、予定通り3月18日から始める方針を崩さない。背景には、本業の国内EC事業の利益が減少していることもありそうだ。(ダイヤモンド編集部 大矢博之)

「送料無料化」を「送料込み」に表現変更
3月18日開始の方針は変更せず

 反省はするが、方針は変えない――。インターネット通販サイト「楽天市場」の送料無料化問題で袋だたきに遭っている楽天の三木谷浩史会長兼社長は、強気の姿勢を崩さなかった。

 2月13日に発表された楽天の2019年12月期決算。売上高は1兆2639億円と前年同期から14.7%増えたものの、営業利益は同57.3%減の727億円と増収減益となった。そして、最終損益は319億円の赤字である(前年同期は1423億円の黒字)。

 最終赤字への転落は8年ぶりとなるが、主な要因は、19年11月に発表していた米ライドシェア、Lyftの約1030億円の減損計上だ。赤字転落そのものは織り込み済みだったこともあり、報道陣の関心は送料無料化問題に集中した。

 「送料無料という言葉が独り歩きしてしまったかなと反省している」

 決算会見で三木谷会長がこう述べた送料無料化問題の発端は19年1月、一定金額以上購入した場合、送料を無料にする方針を同会長が打ち出したことだ。19年8月には3980円以上(税込み)という「送料無料化ライン」(沖縄・離島を除く)も発表し、20年3月18日から始める予定だった。

 背景にあるのは米インターネット通販大手アマゾン・ドット・コムへの対抗意識だ。アマゾンの場合、同社が販売する商品を2000円以上買うと、基本的に送料は無料になる。一方、楽天市場では出店者が送料を決める。このため一部の店舗では、楽天市場の表示順で優位になるよう価格は安く表示し、送料は他店舗よりも高いケースがあった。「『最安値を選んでも、送料が倍だった』という声がたくさんある。楽天市場ユーザーの不満を店舗と一丸となって解消する」(三木谷会長)。

 この施策に反発したのが出店者たちだ。「送料の負担を一方的に押し付けている」「送料を商品価格に上乗せすれば顧客が離れる」などと不満が爆発したのだ。こうした声に、プラットフォーマー規制に意気込む公正取引委員会も腰を上げ、2月10日に独占禁止法違反(優越的地位の濫用)の疑いで楽天に立ち入り検査を行った。

 公取委の立ち入り検査の影響について、「あったかなかったかといえば、正直あった」と会見で語った三木谷会長。対策の一つは表現の変更。「送料無料化ライン」を「送料込みライン」と呼び方を変えたのだ。「『送料無料』の方がユーザーへの響きがいい。だが、価格調整をしてはいけないとか、店舗コストが増えるといった誤解が(出店者に)ないよう、名前を変更した」(三木谷会長)。

 また、今回の施策で退店を検討する出店者に対しては、楽天市場への出店料の払い戻しを予定。アマゾンやヤフー、出店者の自社サイトなど、新たな出店場所が決まった場合、楽天市場の既存顧客に対する移転先への案内も支援するという。

 それでも、3月18日に送料無料化を始める方針は曲げない。「もう何万もの店舗が準備している。今更戻されても困るという声が非常に多い」と三木谷会長は説明。さらに、「われわれの裁量で価格をコントロールしているつもりはない。店舗には(商品)価格を調整してくださいと伝えている。優越的地位の濫用には当たらないと認識している」と主張した。

 強引ともいえる送料無料化を楽天が推し進めるのは、本業の国内EC事業の利益が頭打ちになりつつあるからだ。