部品調達に関して中国からの輸入への依存度が高まっているベトナム(中国からの中間投入財輸入額のGDP比:2003年5.6%→2017年13.3%)や、マレーシア(3.7%→6.2%)、台湾(1.8%→5.4%)では、製造業の活動に何らかの障害が生じるリスクが高まっていると言える。

 現時点では、対象となっている中国企業が徐々に操業再開に向かっていくと期待されているが、ウイルス感染のペースが落ちなければ、操業禁止の範囲拡大や延長という可能性も残る。

 アジア全体に広がる製造業サプライチェーンへの悪影響が拡大する場合は、1~3月期だけにとどまらず、景気の下振れは長期化することが避けられない。

実体経済の悪影響広がれば
資金流出や通貨安の恐れ

 また、カネの流れの変化にも十分注意する必要がある。

 ウイルス感染が拡大し懸念が高まるなか、中国株をはじめアジア金融市場の不安定化が目立った。特に通貨の動きを見ると、対ドルでは日本円を除く多くアジア通貨に大きな売り圧力がかかった(図表4)。

 2月に入り、中国当局による積極的な景気対策を好感し、足元で市場は落ち着きを取り戻しつつあるが、今後の実体経済への悪影響の度合いによっては、タイのバーツ急落を引き金に信用不安がインドネシアや韓国などに拡大した97年のアジア通貨危機のように、市場が動揺する可能性は否定できない。

 アジアには、経常収支赤字(国全体の資金不足を意味)が続き、海外からの資金調達に頼らざるを得ない国もある。

 感染拡大が深刻化するなどでアジア経済に対する不安感が一段と高まる場合、海外からの投資資金が逆流し、経常収支赤字国を中心に資本流出や通貨安の問題が深刻化することにより、金融市場の安定性が大きく棄損されるリスクに注意が必要だ。

 現時点では、1~3月期中に混乱は収束に向かうというのが基本シナリオだが、最悪のシナリオである「第二のアジア通貨危機」として世界経済に深刻な影響が及ぶ展開となるリスクも完全には排除できない。

(日本総合研究所副主任研究員 野木森 稔)