新型肺炎の感染が拡大している。その対応で、どうしても看過できないことがある。世界保健機関(WHO)の「緊急事態宣言」が遅れに遅れたことだ。これはチャイナマネーを意識した「中国への忖度」であることは明らかであり、同じ現象は学問の世界にも及んでいるという。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
新型肺炎の危険性を早くに訴えた
武漢市の李文亮医師が死去
中国湖北省の武漢市で発生した「新型コロナウイルスによる肺炎」が世界に拡大している。中国政府が新型肺炎を公表する前にその危険性を訴え、公安当局から「デマを流した」として処分された武漢市の李文亮医師が2月7日に亡くなったことで、医師の声を封殺して感染拡大を招いたとの怒りが中国国民の間に広がっている。
この連載では、中国政府の「権威主義体制」の限界を指摘してきた(本連載第220回)。香港の若者の抗議行動に対して手も足も出ない中国政府は、新型肺炎への対応でも、無残な姿をさらしている。