米国ワシントンに本部を置き、LGBTに対する差別や暴力を世界からなくそうと活動する団体である、グローバル・イクオリティー・カウンシル。その代表を務めるマーク・ブロムリー氏は、自身もゲイで夫のデイビッド・サリーと結婚している。世界各国に存在するLGBTに対する暴力と差別の現状と、社会がLGBT を受け入れる際に取るべきステップについて話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)

世界ではLGBTに対する
ヘイト・クライムが存在する

マーク・ブロムリー/グローバル・イクオリティー・カウンシルの代表。本団体を立ち上げる前は、国際的な人権問題を扱う Global Rights にて11年勤務。2005 年には米国インターセックス・イニシアティブを設立。その間も国連における人権システムの進展状況を監視。2001 年から 2002 年の間は、ラス・ファインゴールド連邦上院議員の元で外交政策フェローを務めた。バージニア大学ロースクールより法務博士を取得。人権や国際法の問題に関する執筆活動を行なう傍らバージニア大学やノバサウスイースタン大学にて教鞭をとっている。現在、夫のディビッド・サリーと娘のタルーラとワシントン 在住。
Photo by Satoru Oka/REAL

――世界ではまだまだLGBTに対するヘイト・クライム(Hate crime、憎悪犯罪と呼ばれ、人種や民族、宗教、性的指向などの特定のグループに対して偏見を基に行なわれる暴力、犯罪のこと)が存在すると言うが、日本ではニュースになりにくく、一般的にそれほど知られていない。LGBTに対する攻撃について現状はどのような状況なのか。

 暴力は学校で子どもが行なっていたり、地域のなかでの近隣の住民が行なっていたりするケースが多い。政府が暴力を振るう主体ではない。時として、LGBTの家族が暴力を振るっていることもある。

 しかし、そうした暴力の存在を認識しても、政府や警察が対応しきれていないケースが多い。十分に捜査ができなかったり、訴追ができなかったりしている。そんな状況なので、被害を受けたLGBTは警察へ訴えることをためらってしまう。LGBTへの暴力を前にして、何もできない警察に駆け込んでも、逆に辱めを受けたり、さらなる暴力を受けるかもしれないと思ってしまうのだ。警察が市民を保護しきれていないということだ。

 もっとも、米国でもLGBTに対する権利保護については問題がある。最近になって、連邦政府はヘイト・クライム防止法(2009年10月にバラク・オバマ米国大統領が署名した。法案の正式名称は同性愛者やアフリカン・アメリカンであることを理由に殺害された2人の男性の名前にちなみ「マシュー・シェパード、ジェームズ・バード・ジュニア ヘイト・クライム防止法」と命名された)の対象を、同性愛者らにも拡大したばかりだ。これで連邦政府は、米国の州でLGBTに対するヘイト・クライムと疑われる事件が起こって、州政府や警察が捜査を行なう意思がなかったり、その能力が欠けている場合は、直接、訴追したり捜査に介入できるようになった。

――日本政府や社会のLGBTへの理解や許容度は、世界各国と比較するとどのくらいのレベルにあると思うか。