イギリスでオリンピックが開催された。イギリスと言えば、思いだすのは第2次世界大戦の英雄、ウインストン・S・チャーチル(以下チャーチル)だろう。

 彼は海軍軍人であり、老練な政治家。ヒトラー率いるナチス・ドイツがヨーロッパを侵略し始めた頃、戦争内閣を率いて、ドイツと戦った。チャーチルは、政治家であるが、歴史家、文筆家であり、第2次世界大戦などの一連の作品でノーベル文学賞も獲得した。

 その作品の一つ、第2次世界大戦(1巻から4巻・河出文庫)は、圧巻の第2次世界大戦の記録だ。これを読むとヒトラーは戦争や外交が巧みで、次々と欧州に支配を広げて行く。イギリスの同盟国は次々とドイツに降伏する。チャーチル率いるイギリスは、孤立無援だ。

勝利を確信した瞬間

 チャーチルは、とにかく戦い抜くことを決意し、イギリス軍に指示を飛ばし、国民を鼓舞する。しかしロンドンは空襲で破壊され、もはやこれまでかと思いかけた頃、それまで粘り強く参戦を促していたアメリカが、参戦を決めたのだ。

 きっかけは日本のアメリカ攻撃、すなわち真珠湾攻撃だ。

「本当です。私どもも外で聞きました。日本はアメリカを攻撃したのです」

 執事ソーヤーズがチャーチルに言った。

 河出文庫第3巻には、その時のチャーチルの興奮ぶりが活写されている。

 日本軍の真珠湾攻撃の情報を得たチャーチルは、アメリカ大統領ルーズベルトに電話し、「大統領閣下、日本はどうしたのですか?」と聞く。ルーズベルトは「本当です」と日本軍の真珠湾攻撃の情報を肯定し、「いまやわれわれは同じ船に乗ったわけです」と答える。