嘘をつかないことのほうが
目先の利益よりもずっと大事

 それに対して、ANAホテルやデルタ航空といった欧米系の外資系企業の社員は、法律や社内ルールを守らないと、逆に処罰されてしまいます。

 私も外資系企業に勤めていたことや、多くの外資系企業を顧客にしていたことがあるのでわかりますが、外資系企業の社員にとって、グローバルなルールは現地の社会ルールよりも上位に位置します。グローバルブランドを守るほうが、目先の業績よりも重要だからです。

 具体的には、彼らがグローバルで共有する「嘘をつかない」という企業理念を堅持するほうが、グローバル業績の数%程度を占めるに過ぎない日本事業の業績が2~3年低迷する状況を回避するよりも、はるかに重要だと考えるのです。

 同様の判断で、今世紀に入り最もインパクトが大きかった事例が、グーグルの中国からの撤退でしょう。同社は中国政府による検閲を拒否するために、中国という巨大なビジネスチャンスを棒に振りました。それでも政府の検閲に協力しないという理念を優先するほうが、グローバルで見れば長期的な信頼につながると、彼らのような外資系企業は考えるわけです。

 ただ、ワリを食うのは現地の幹部です。ANAホテルでいえば、グローバルなルールに従うことで一国の首相に恥をかかせざるを得ない。そのせいで業績が下がれば、自分の責任になる。まさに板挟みです。日本企業のサラリーマンよりも外資系企業のサラリーマンのほうが、実は悲哀は大きいのです。

 では、忖度によって日本企業は得をしているのかというと、必ずしもそうとはいえません。日本企業の多くが長期の信頼よりも短期の嘘を選ぶメカニズムを持つことに、消費者は何となく気づいているからです。