事業として広がった3つのターニングポイント
――ときどさんが、eスポーツの拡大を肌で感じるようになったのはいつごろですか?
ときど 世界最大級の大会「EVO」(Evolution Championship Series)に参加するようになってからですね。僕は高校時代から、アメリカのラスベガスで行われる大会に参戦して現場を見ていました。旅費は親に泣きついて出してもらいました。
毎年行くたびに、会場規模が倍になっている状況だったんです。観客数が多いし、「もし日本でeスポーツが広がらなかったとしたら、海外に行ってでもやってやる」と考えて、大学院を辞めてプロゲーマーの道に進むことにしました。その後、国内でもブームがやってきて、今に至ります。
山内さんは、いつからeスポーツ事業に手応えを感じましたか?
山内 ターニングポイントはいくつかありますね。
ひとつは、スマートフォンとSNSが爆発的に広まって、「動画コンテンツが身近」になったタイミング。
もうひとつは、「通信環境の進化」です。5年前には、外出先で動画を眺める人は今よりずっと少なかった。これから5Gが普及したら、もっと増える。前回の記事で述べた通り、eスポーツはコンテンツパワーがあるし、配信も一気に広まる可能性があると考えています。
3つめが、具体的な「ゲームの存在」です。2017年にリリースされたバトルロイヤルゲーム『荒野行動』は、これまでeスポーツを知らなかった、やっていなかった層にも爆発的に広まりました。業界全体のパイが増えたことで、当然ビジネスとして成立する可能性も大きく広がりました。
ある業界がコアファンだけでなく、広く一般(ライト層)に知られるためには、「単なるプレイヤーを超えた存在」の人が出てくることが重要だと僕は思っています。野球で言えばダルビッシュ有さん、サッカーで言えば本田圭佑さん。彼らは単なる野球選手、サッカー選手という枠を飛び越えた「個人」として、活躍していますよね。
eスポーツ業界がより多くの人に受け入れてもらうために、ときどさんのような選手の存在は、今後ますます重要になっていくと思います。