スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが国連で行ったスピーチが話題になり、再び注目を集めている地球温暖化問題。ただし、対策を真面目に考えているのは日本だけだ。2030年までに総額100兆円も使う予定だが、その実効はほとんど期待できない。そもそも人為起源CO2を温暖化の主因と見る前提そのものが大いに疑わしい。著書に『「地球温暖化」狂騒曲』(丸善出版)と訳書『「地球温暖化」の不都合な真実』(日本評論社)がある東京大学名誉教授の渡辺正氏に話を聞いた。(清談社 福田晃広)
地球温暖化脅威論の
発端は1988年
「人為起源CO2が地球を暖めている」という言説が世界に広まったのは1988年のこと。国連傘下の組織「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が報告書でそう指摘した。報告書は、温暖化を自明の事実とみた上、「温室効果ガスをこのまま大気に排出し続けると、生態系や人類に重大な影響を及ぼす気候変動が進む」と警告し、それが広く注目を集めた。
1997年12月、地球温暖化に対する国際的取り決めのための会議(COP3)が京都で開かれ、名高い「京都議定書」が採択された。
京都議定書は先進国に、「2008~2012年に温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンなど)を1990年比で約5%削減せよ」と要求した。国ごとの排出削減目標として、EUは8%、アメリカは7%、カナダと日本は6%の削減を課せられた。
日本は排出量取引などの「数字合わせ」で目標を達成したが、アメリカは2001年3月末に議定書から離脱し、カナダも2007年4月に「6%削減の断念」を発表(2011年12月に離脱を表明)するなど、世界全体の足並みはそろっていなかった。
国連の意図は、温暖化問題を口実に、先進国から途上国への財政支援を促すことにあった(前掲の訳書に詳しい)。京都議定書の中で中国は、排出削減義務のない「途上国」に分類された。1980年代の排出量は少なかったが、日本の8倍もCO2を出して世界最大の排出国になった現在、もはや国連のもくろみは破綻している。