東京やベネチアが進める世界屈指の「水没対策」はどこまで有効か
地球温暖化に伴う水害リスクが指摘される東京やベネチアでは、実は世界屈指ともいわれる対策が進められている(写真はイメージです) Photo:PIXTA

今年も水没したベネチアで
進む「モーゼ計画」の全貌

「水の都」ベネチアでは、今や冬の風物詩にもなってしまった「高潮による水没」が今年も起こり、サンマルコ広場が数十センチの高さまで浸水してしまいました。ベネチアでは冬に、シロッコと呼ばれる南からの風が吹きます。そのシロッコの影響で冬に高潮が発生しやすいのですが、そこに大雨が重なると水没が起きるのです。

 地球温暖化が進行していることで、世界中の海沿いの都市はどこでも、いずれ水没する危機にあるといわれています。中でもベネチアは、中世にモンゴルから来た騎馬民族の襲撃を避けるため、馬が入ることができない湿地帯の先の海の上に杭を打ち込んで築かれた都市のため、温暖化が進んだ場合には真っ先に海に沈むといわれています。

 それで、ベネチアの人々が諦めて、水没の運命を待っているばかりかというと、まったくそうではありません。「モーゼ計画」という壮大な名前の巨大プロジェクトが、ベネチアで進んでいます。モーゼとは、みなさんご存じの『旧約聖書』の登場人物で、アロンの杖を使って海を真っ二つに分けた人物として知られています。

 このプロジェクトでは、モーゼのようにアドリア海の海水を巨大な可動壁でせき止め、高潮の際に海水がベネチア市内に流れ込まないようにする計画です。

「そんな馬鹿な!」と思うかもしれませんが、イタリア人は本気です。巨大な6階建てのビルと同じ大きさのコンクリートの防潮壁を、海中に78個も沈めます。総延長は1.6キロメートルほど。その防潮壁内部の空洞部に空気を注入して海水を押し出すと、防潮壁が浮力で浮いて、海上の巨大な壁として立ち上がるのです。