米国の家計や企業、そして投資家は、新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年上半期(1-6月)に経済が急激に落ち込む事態に備えるべきだ。そして下半期(7-12月)には持ち直しが期待できるだろう。
その過程で、連邦政府の財政赤字規模は、2008年の金融危機後に記録した過去最大(約1兆5000億ドル=約160兆円)の水準に達しかねない展開となりそうだ。
新型ウイルス危機を受けて、経済予測の見直しを急ぐエコノミストからは、この2点を指摘する声が上がる。米経済の活動が縮小すれば、世界経済のリセッション(景気後退)入りが現実味を増す。
格付け会社ムーディーズのエコノミー・ドット・コムの首席エコノミスト、マーク・ザンディ氏は「新型ウイルスへの対応に追われる中、経済は停止状態に入りつつある」と述べる。「ウイルスの危機がおそらく収束し、経済が緩やかに正常化に向かうのは下期になるだろう」
先行きは極めて不透明だ。米連邦準備制度理事会(FRB)当局者は緊急利下げなどの金融緩和策を発表した15日、年内の経済動向について最新の見通しを示さなかった。だが基本の経済見通しを示すことは、企業首脳による雇用・投資の決定や家計管理、投資家の資産再評価にとって極めて重要だ。
ザンディ氏は1-3月に年率1.6%、4-6月には2.5%のそれぞれマイナス成長となるが、下期にかけて回復し、2021年は3%超のプラス成長に改善すると見込む。
JPモルガン・チェースも上期は1-3月に2%、4-6月は3%のマイナスとなるが、下期は持ち直すと予想。ゴールドマン・サックスは1-3月がゼロ成長、4-6月は年率5%のマイナスとなるが、下期は3%を超える成長率に戻るとみている。4-6月のマイナス幅がさらに広がるとの予想もある。
予想される景気低迷の深刻さは次の要因によって左右される。今後のウイルスの感染動向、景気下支えに向けた政策担当者の対応、予想外の衝撃に対する金融システムの耐性だ。