仕事のほとんどは、組織やチーム、クライアントとの人間関係によって成り立っている。そのどこかしらに「やっかいな人」「面倒くさい人」たちは存在している。ひょっとしたら、自分もその「やっかいな人」になっているかもしれない……。ビジネスの現場にいれば誰しもが直面する「やっかいな人」問題。そのなかでいま、私たちに求められているのは、人との関係性をうまく構築する「ソフトスキル」を磨くこと。『ハーバード・ビジネス・レビュー』による「EI emotional intelligence感情的知性」シリーズ、最新刊『やっかいな人のマネジメント』発売を機に、早稲田大学大学院・ビジネススクール教授の入山章栄氏と、かつてUber Japanで政府渉外・公共政策部長として日本でのロビイング活動や事業戦略部長を務め、現在はROOTS Mobility Japan代表を務める安永修章氏に、「やっかいな人」と仕事をする上での対応の仕方や、イノベーションや社会変革におけるコミュニケーションの重要性について語ってもらった。【後編】(構成/田坂苑子、写真/斉藤美春)

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「やっかいな人」にはあえてノーガード戦法でいく

入山 これは意外とよくありますよね。外の問題に気を取られていたら、中のほうが実は大変だった、ということが。Uberのような外資系は特にそうでしょうね。まず、アメリカ本社vs日本の子会社。そして、子会社でなんとかしようとしている安永さんvs日本のタクシー業界、という構図ですね。両方の「やっかいな人」たちに、どう対応されたんですか?

安永修章(やすなが・のぶあき)
早稲田大学大学院修士課程修了。米国ワシントンD.C.のシンクタンク、日米研究インスティテュートにて2009年から5年間マネージャー兼リサーチャーとして勤務。帰国後、米国NPOの米日カウンシルに渉外担当ディレクターとして就任。その後、米国企業の日本本社において政府渉外担当リーダーとして勤務した後、2017年1月からUber Japan株式会社に政府渉外・公共政策部長に就任。Uberの日本でのロビイング活動を率いる。その後、2018年10月より事業戦略部長としてUber Japanの主にモビリティビジネスの事業戦略策定に携わり、2019年2月に退職。現在は日本企業や外資系のモビリティ関連ITベンチャー企業の事業戦略、ロビイング活動やMaaSに関するアドバイスを行うROOTS Mobility Japanの代表。

安永 タクシー業界のほうに対しては、もう「ノーガード戦法」です。お好きに刺してください、と。こちらが、「こいつはやっかいだな」と思うときは、相手もこちらに対してそう思っていることがほとんどです。そういうなかで、喧嘩を仕掛けてきている相手に喧嘩腰で向かっていってもなんの生産性もない。なので1回、相手の懐に入ってみたほうがいいな、と。つまり、論陣を張らずに、1回相手の話を全部聞こうと思ったんです。

 私は2017年1月にUberに入ったのですが、すぐにまず国交省に行きました。国交省の自動車局旅客課というところがありまして、Uberの事業を道路運送法違反だと言って、Uberを逮捕させようとした部署です。

入山 そこに、ノーガードで行ったんですか?(笑)

安永 ええ(笑)。「なんでUberがここにいるんだ!」と、かなり怪しまれました。国交省の旅客課というタクシー業界の牙城のようなところに、なぜUberの人間がいきなり来たのか、いったい何を話したいんですか、と。「タクシーとの協業について話したいんです」と伝えると、「わかったわかった。ではこちらへ」と連れていかれたのが、なんと倉庫だったんです。まるで取り調べを受けているような扱いでした(笑)。そこから最初の1カ月間は、なんでUberがダメなのかというような話をずっとされました。ただ、そこでめげずに、そのときこちらに同情的な姿勢を見せてくれていた方に、毎日電話したんです。この人ならきっとわかってくれる、と思って。

入山 なるほど。ある程度ターゲットを決めて、わかってくれそうだと思ったらしつこくやる、と。

安永 ええ。何かあったらすぐに会いに行きましたし、ただ会いにいくだけではなくて、Uberが何をしようとしているのかをひたすら話しました。Uberは地方の交通難民の人たちを助けたいのだと、タクシー運転手の生活を壊すのではなくて、タクシーと一緒に二次交通の世界を変えていきたいの、だと。