DgSの企業再編が最終局面へ向けて動き出したようだ。改正薬事法施行のタイミングに合わせるかのように、6月に入り、中堅DgS企業の経営統合が発表された。
6月2日、大阪南部を中心に郊外型DgSおよび調剤薬局58店舗(5月末現在)を展開するイレブン(大阪府堺市、槌屋茂康社長)とグローウェルホールディングス(東京都千代田区、高田隆右社長、以下グローウェルHD)は、グローウェルHDを完全親会社とする株式交換を行うことで基本合意し、同日基本合意書を締結した。
両社の経営統合によって、イレブンの社長を務める槌屋茂康氏はグローウェルHDの取締役に就任する予定だ。2008年10月1日にウエルシア関東、高田薬局両社の経営統合によって設立されたグローウェルHDは、今年1月に茨城県を地盤とする寺島薬局を孫会社(ウエルシア関東子会社)として買収しており、イレブンを加えた3事業会社による売上高は2100億円規模(各社直近決算期売上高の単純合算)となる。
1975年に独立し薬局経営をスタートさせたイレブンの槌屋茂康社長。「家業としての最初の10年、企業としての自立をめざした次の10年があったが、次の10年で社会的な存在価値を実現する公器としての企業づくりを第3の創業と位置づけて進めたい」と語り、業界再編による経営環境の変化に加え、成熟社会でのDgSの新たな役割が求められる中で、大手DgSグループ入りすることで次なる発展をめざすとしている。
イレブンのグローウェルHD入りが発表された2週間後、6月16日、住友商事(東京都中央区、加藤進社長)とクスリのカツマタ(神奈川県川崎市、勝又泰夫社長)は都内で会見し、住友商事がクスリのカツマタの発行株式の約99.5%を取得し、クスリのカツマタが住友商事の子会社となることで合意したと発表した。
住友商事は、100%子会社である住商ドラッグストアーズ(東京都文京区、廣瀬泰三社長)が東京都心部を中心に首都圏および宮城県仙台市で調剤併設型をメーンとするDgSを展開。「トモズ」「アメリカンファーマシー」「メディコ」「コーエイ」の店舗名で110店舗を持つ。
一方、今回住友商事グループ入りするクスリのカツマタは、東京南西部から神奈川県川崎市周辺のエリアで25店舗を展開。わずか25店舗ながら、狭域エリアでドミナント展開し、商圏内生活者の知名度も高い。出店を絞り、既存店を強化することで商圏内生活者の支持を獲得し、売上高140億円あまりを計上。業界内でも高収益体質の企業として知られている。
クスリのカツマタは住友商事グループ入り後、1年以内を目途に住商ドラッグストアーズと経営統合し、売上高500億円規模のDgSが誕生する見込みだ。住友商事としては、両社の経営統合によって、クスリのカツマタのMDおよび販売ノウハウを住商ドラッグストアーズ店舗で活用、これまで住商ドラッグストアーズが進めてきた都心型の調剤併設型DgS展開にアクセルを踏み込む。
さて今回の経営統合発表で、クスリのカツマタが参画する調達や販促の共同組織・十社会の動向だが、十社会では住商ドラッグストアーズとの統合後人事が明らかになった後に組織としての方針を決定するとしている。十社会でのオリジナル商品開発でも活躍してきた勝又泰夫クスリのカツマタ社長への好意的な執行猶予ともとれる内容だ。ただ当の本人は、統合新会社での経営に積極的に携わる意志はいまのところない模様。新人事に注目だ。
DgS企業では、売上高100億円から300億円規模の企業で、経営統合やグループ入りの動きが活発化している。上位寡占化の進行を目の当たりにする中で、今後もしばらく企業売却、経営統合発表が続きそうだ。
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