約20年前の巨額遺産相続を巡り、化粧品大手ポーラ・オルビスホールディングスの鈴木郷史社長が叔父(故人)の妻に訴えられていた裁判。東京地裁は25日、鈴木社長の不正疑惑の判断に踏み込まず、訴えを却下した。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

ポーラHD鈴木社長による書類捏造疑惑
東京地裁は判断せず

鈴木社長側の勝訴判決を出した東京地裁鈴木社長側の勝訴判決を出した東京地裁 Photo by Masataka Tsuchimoto

 東京地裁の傍聴席最前列で「原告の訴え却下」の判決を聞いたポーラ・オルビスホールディングス(HD)の鈴木郷史社長は、安堵の表情を見せた。

 神奈川・箱根のポーラ美術館所蔵の美術品839点は「本来約20年前に遺産分割すべき対象だった」として、鈴木常司会長(2000年死去)の妻千壽氏が18年5月、甥の鈴木社長や公益財団法人ポーラ美術振興財団(理事長=鈴木社長)などを相手取り、遺産対象の確認の訴えを起こしていた。

 原告千壽氏は、鈴木社長が約20年前、遺産相続に関連して不正な書類(常司会長からポーラ美術振興財団へ美術品の寄付を確約する書類)をバックデートで捏造したと主張。その根拠は、初めて疑惑を明るみにした、ポーラ・オルビスHD元ナンバー2(元常務取締役)による数年前の内部告発だった。

 しかし東京地裁(大嶋洋志裁判長)は25日、二度と裁判で争わないと約束した“過去の両者の和解合意”に反すると判断し、鈴木社長の不正疑惑の「真偽はおくとして」(判決文ママ)、訴えを却下した。つまり提訴から2年弱も審理したが疑惑の判断には踏み込まず、原告を入り口まで戻して“門前払い”したわけだ。

 原告は「肩透かし判決だ」として、近日中に控訴するもようだ。

 一方、ポーラ・オルビスHDの現経営体制を揺るがしかねない「もう一つの遺産裁判」の判決が今夏にも迫っている。