とにかく思い出喚起力がすごいのだ。是非皆さんも、この本を読みながら食にまつわる思い出に浸り、あるいは忘れていた恥ずかしい食の思い出をも取り戻して、それぞれの味を再確認してください。楽しいです。

おいしいものをおいしいなと言いながら
生きていくことができるありがたさ

 そのほか、レシピやアイデアも満載。

 余った寿司飯をどうリメイクするかとか、いかにして塩辛をアレンジするかなどは、「その手があったか!」という新鮮さと「そんなことでいいのか!」という包容力とが実に塩梅よいので「ああすぐにでもやってみたい」という気持ちになる。

 とりあえず、目から鱗の寿司飯リメイクを試すために次の休みにはたくさん寿司飯を炊いて、わざと余らせようと決めた。

“食べものとともに、生きていく”

 近頃本当にそう思うのだ。

 生きることは食べること、食べることは生きること。たった一口でも「ああおいしい」と心から感じられたら、人生は捨てたものじゃないのだ。時に殺伐としたり味気なかったり、不安になったりする日常も、美味しい瞬間があればまた立て直せる。「おいしいね」と言いながら恨んだり怒ったり嫉んだりは出来ない。

 ユーモアに溢れたエッセイを読みながら、おいしいものをおいしいなと言いながら生きていくことができるありがたさを、改めて感じたのである。

餃子は何でも包む小宇宙?伝説の居酒屋店主が教えるレシピ

(HONZ 麻木久仁子)