日本経済は新型コロナウイルスの感染拡大で深刻な不況に陥っている。しかし、そんななかでも少子高齢化によって不況に打たれ強くなっていることは、明るい材料である。(塚崎公義)
少子高齢化による労働力不足で需要が安定
日本は、少子高齢化で労働力不足の時代を迎えている。物(財およびサービス、以下同様)を作る現役世代の人数が減っているのに、物を使う人(すなわち総人口)は減っていないので物不足となり、「若者は失業しないで働ける」時代になっているのだ。
高齢者の消費が労働集約的な医療や介護に偏っていることも、労働力不足の一因である。もし自動車を購入する若者が増えても、自動車は全自動ロボットが作業を担う部分が多いので労働力不足になりづらい。しかし、介護はどうしても人手に頼らざるを得ず、介護が必要な高齢者が増えれば介護士不足になる。
労働力不足になると、不況になりにくい。たとえば輸出が激減して輸出企業がリストラを実行しても、失業者がすぐに次の仕事を見つけられるので、彼らの所得と消費は落ち込まないのである。
リーマンショックのときには、輸出企業をリストラされた人が失業して「所得がないから消費できない」ために個人消費が減って、景気をさらに押し下げたが、少子高齢化がさらに進んだ今は、そうした事態が起きにくくなっているのである。
高齢者の所得と消費の安定が寄与
高齢者は、所得が安定しているため、消費も安定している。主な所得は年金だろうし、貯蓄も「毎月一定額を取り崩す」場合が多い。したがって、消費者に占める高齢者の比率が上昇していくことで、個人消費の増減の波は小さくなっていく。