「これは戦後最大の人類の危機である」――。柳井正会長兼社長がそう言い切るほどに、グローバル企業であるファーストリテイリングの傷口は深かった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2020年8月期第2四半期決算は減収減益に転落。同社を引っ張ってきた中国ユニクロが大幅に落ち込んだ。通期予想も大幅に下方修正したものの、欧米、日本の業績回復のめどは立たない。ユニクロは勢いを取り戻せるのか。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)
最高益予想も一転、減収減益に
新型コロナが牽引役の中国市場を直撃
「新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大を通じて明らかになったのは、世界が完全に一つになっているということだ」――。
4月9日、都内で開催されたファーストリテイリングの2020年8月期第2四半期決算発表会。登壇した柳井正代表取締役会長兼社長は、神妙な面持ちでこう述べた。
グローバル化してリスクを分散してきたファーストリテイリングだからこそ、たった一つのウイルスが徐々に飛び火し、ついには全地域の事業に伝播していくという恐怖を実感したに違いない。
ここ数年のユニクロの成長を支えていたのが中国事業だ。このため、新型コロナの業績へのインパクトが懸念されていた。
9日発表の第2四半期までの売上収益は1兆2085億円(前年同期比4.7%減)、営業利益は1367億円(同20.9%減)と、当初の予想をはるかに下回る減収減益となった。
最大のマイナス要因は、海外ユニクロ事業。特に新型コロナが直撃して悪化した中国市場である。
海外事業では昨年度から、韓国の業績は失速。ただグレーターチャイナは前期に営業利益が30%を超える増益になるほど、ここ数年高成長をキープしてきた。ところが新型コロナの影響で、2月には最大395店を臨時休業。中国大陸の2月の既存店売上高は、約8割減となった。その結果、海外ユニクロ事業の営業利益は532億円で前年同期比39.8%の減少となった。
さらに、追い打ちをかけたのは、新型コロナの国内事業への影響だ。3月の既存店売上高(EC含む)は前年同月比72.2%、客数は67.6%と大幅に落ち込んだ。
ユニクロの既存店売上高が急速に悪化した過去の例としては、フリースブームが過ぎ消費者の「ユニクロ離れ」が話題になった02年に、前年比82.7%(カタログ通販・EC含む)に沈んだことがある。今回はその02年を超える落ち込みだ。