一部の専門家から、「今回のパンデミックは、約1世紀前に世界に広がった“スペイン風邪”に匹敵する威力を秘めている」といわれる。実体経済の悪化に加え、世界の秩序、常識も変容し始めた。個人も企業も政府も、それなりの覚悟を持って現状および今後の変化に対応する必要がある。

新型コロナウイルス
感染拡大の現状分析

 世界各国で新型コロナウイルスの感染が広がり、政治・経済・社会の混乱(コロナ禍)に拍車がかかっている。その一方、為替レートや株価などの動きを見ると、金融市場参加者は先行きを楽観しているようだ。その見方が適切か否か、冷静に考えなければならない。足元の事態は、それほどの楽観が許される状況ではない。

 中国では武漢市の封鎖などによって、とりあえず感染を抑えることはできた。しかし、有効なワクチンが見つからない状況では、今後がどうなるかは分からない。4月8日に武漢市の封鎖が解除されたものの、無症状の感染者が増加するなど先行きの不透明感も残っているとみるべきだ。外出制限が解除されて感染が再燃するリスクは軽視すべきでない。過去のパンデミックにおいても、複数回にわたって感染者が増加した。

 同時に、中国の経済活動は徐々にではあるが持ち直し始めている。1〜3月期、中国における社債の不履行は前年同期比3割減少した。共産党政権が中小企業を中心に資金繰り支援に注力したことの効果は大きい。また、感染者数の鈍化とともに生産活動も再開され、失業の急増が食い止められているとの見方もある。

 一方、欧米各国の感染状況に関しては、今のところ、収束の道筋が見通せない。米国では、連邦政府と州政府の連携などがうまく進まず、医療体制が限界を迎えている。その中、ニューヨーク州のクオモ知事は強力なリーダーシップを発揮し、一時は感染鈍化の兆しが出た。強いリーダーシップは社会全体で感染の拡大を抑えるために欠かせない。ただ、それでも、ニューヨーク州の死者数が増加し状況は厳しい。ニューヨークのセントラルパークにテントの仮設病院が設置されるほど、米国の医療体制は機能不全に陥っている。

 欧州ではフランスの死者数が1万人を超えた。イタリアでは感染・死者数とも鈍化していると報じられているが、公衆衛生を中心に市民生活はかなり苦しくなっている。イギリスではジョンソン首相自身が一時、ICUに入るなど、政治への影響も深刻化し始めている。