私を変えた祖母の言葉

──そこからまた、自信を取り戻したきっかけは、何かあったんでしょうか。

山口:母代わりをしてくれた祖母の死がきっかけです。
祖母との想い出をたどると、
「いつも笑っていなさい。
背筋を伸ばして
いい姿勢で歩くのよ」

と、背中をポンと押して、毎朝送り出してくれていました。
よく何もない平らなところでつまずいていたので、
「足を上げて歩きなさい」
ともよく声をかけてくれました。
祖母自身も、また、つまずいて骨折を繰り返し、車椅子、寝たきりという経験をしていたのです。
大好きな祖母に恩返しができなかったけど、私の心の中で生き続ける祖母の言葉と共に生きると決めた
言い換えると、ウォーキングを通して活力寿命延伸を使命としようと決めたことが大きな転機になりました。

「ミセス日本グランプリ」というコンテストでウォーキングを通して活力寿命延伸活動をしていきたいという自分の思いをもっと軽やかに楽しく伝えたいと思い、
「90歳になってもハイヒールの履ける人生を」という言葉に置き換えてスピーチをしました。結果、40代のグランプリになったのです。

──そんなことがあったのですね。

山口:はい。「ミス・ユニバース・ジャパン」でのスピーチがずっとどこかで引っかかっていて、「否定的な自分を肯定的に変えていきたい」とは潜在的に思っていました。
心にかかっていたロックがスッと取れたのは、2011年、「ミセス日本グランプリ」の40代グランプリに選ばれたときかもしれません。
「ミス・ユニバース・ジャパン」や「ミセス日本グランプリ」などでは美を競っていくのですが、「外見美」ではなく、「内面の美」のほうが大事なのです。
「ミス・ユニバース・ジャパン」に出たとき、外見美だけではどうにもならないと思った。
本当の美しさは、内面からあふれてくるものだと。
それが多分、「オーラ」、「輝き」、「自信」などで表されるものだと思うのです。
結局、自分が努力したことがまわりに認められたとき、一つの自信になるのかもしれません。

──努力したことを認められたことが、自信に繋がる……。
その繰り返しなのでしょうか。

山口:努力して評価されると、一つの自信になる。
でも、それも同じことで評価されていると、ステージが一緒のままだったら、だんだん喜びではなくなってくる。
美容の世界は果てしないですよね(笑)。
だから、どこかで納得しないといけない。
たとえば、外見美だけを追っていけば、顔やボディラインを整え、トレンドの服を着て、憧れのブランドを身につけ、外見美を装うことができます。
外見美は他力でも整ってしまいます。それも自信につながるひとつ。
さらに、自信をより強く持つためには、自分で努力をし、ありのままの自分を認めながら、成功体験を積み重ねていくしかない。
でも、そこに価値を置かず、自分自身に価値を持っていれば、ブランドものではない普段着だったとしても、自信にあふれた女性でいられる。

──なるほど……。それが真の自信なんですね。

山口:私の場合は、自分のやりたいことにチャレンジしているからかもしれません。結果を出し続けていることが、自信につながっています。
私のウォーキングスクールに通う受講生たちもそうですが、きれいに歩くことで自信を得ているのです。
きれいに歩けるようになったら、その次の世界へ行きたくなる。

そこで、自分自身が「できた!」と思ったこと、つまり努力したことをまわりが認めてくれたり、ほめてくれたりすると、どんどんステージが上がっていくのです。
自信はそういうものだと思います。

──自分やまわりに置き換えて考えてみると、目標を高く設定して、期待して頑張った結果、うまくいかなかったら……と思うと、なかなかチャレンジできない。だから成功体験も少なくなり、結果的に自信のなさにつながっているのかもしれません。

山口:上を見てばかりでなかなか成果があがらないと、下に落ちるのが怖いのかもしれませんね。
だから、あまり期待しないようにして生きる。そういう生き方も、もちろんありだとは思います。
ただ、もし本気でやりたいことがあるなら、そういう考え方はしないほうがいいと思う。
結局、人生のステップが遅くなってしまうから。
『やせる3拍子ウォーク』の中にも書いたのですが、私は「3歩進んで、ふんばる」を座右の銘にしています。
3歩進んでも失敗したり、マイナスのことが起こるかもしれないけれど、ちゃんとふんばれば、そこから上がっていけるかもしれない。
小さな成功体験の積み重ね。
「今日は通勤時に『3拍子ウォーク』ができた!」そんなレベルからで十分です。

今日の一歩が、未来をつくる一歩に変わっていくのだと思います。