ゴルフ練習場の経営者は、農業用水路と白川をつなぐ水路から流出した激流が隣接のゴルフ練習場の外壁を突き破り、受付などがある建物の柱や天井にずれができたため、雨漏りがするようになったとして、約4087万円の賠償を求めていた。

 根拠にしたのは、「道路、河川その他の公の造営物の設置または管理に瑕疵(欠陥)があったため他人に損害を与えたときは、国または公共団体は賠償する責任がある」と定めた国家賠償法2条の規定だ。

 裁判では、水路の構造などに瑕疵があったかどうかが争点になった。

 原告側は、今本博健・京都大学名誉教授の意見書などを基に、「水路は当然持つべき安全性を欠いており、それは構造を変えることで解消できた」などとして、「瑕疵あり」と主張した。

 これに対して被告側は大本照憲・熊本大学大学院教授の意見書などを基に、「水路の構造を変えるには多額の建築費用が必要だが、自治体が原告ら一部の受益者のためにそのような支出をすることは許されない」などとして、「瑕疵なし」と反論した。

危険性を予見できた
多額の費用はかからない

 判決は、今本教授の意見は「被害当日の状況を合理的に説明するもの」であり、「十分に説得力がある」とする一方、大本教授の見解は「合理性に疑問がある」とした。

 そのうえで、(1)水路の構造に問題があり、豪雨のときに流出水が一気にあふれ出る危険性は予見できた、(2)その危険性は、たとえば高さ2m程度のコンクリート製擁壁を設置していれば防ぐことができた、(3)この措置に多額の費用を要するとは考えられないとし、水路の設置または保存に瑕疵があったと認めた。

 ただ、損害賠償については、水路からの流出水によって建物の柱や天井のずれが生じたとは断定できないとして、建物の修理費や休業損害などに関する請求は退け、外壁の修理費だけに限定して、賠償額を大幅に減額した。

 これに対し熊本市は、判決に納得できないとして控訴した。

「壁」になってきた最高裁判決
河川整備に財政的、技術的制約

 河川水害によって流域住民が被った損害賠償訴訟では、これまで「大東水害訴訟最高裁判決」(1984年)が「厚い壁」になってきた。

 この裁判は、1972年7月の豪雨で、大阪府大東市を流れる川(淀川の支流のそのまた支流)の未改修部分からの溢水(いっすい)によって床上浸水の被害を被った住民71人が、「改修工事を5年以上も放置するなど、管理に重大な瑕疵があった」として、河川管理者の国と費用負担者の大阪府などに損害賠償を求めたものだ。