大手ゼネコン4社が罪に問われたリニア中央新幹線工事の談合事件は、業界に大きな衝撃を与えた。互いの受注希望を調整した“星取表”が重要証拠となったが、裁判を通じて新事実が浮かび上がった。この表の作成を最初にゼネコンへ指示したのは、なんと談合の「被害者」であるJR東海だったのだ。特集『リニア談合 暴露裁判』(全5回)の#1では、JR東海が作成させた表が談合の星取表になっていく異様な経緯を克明につづる。(ダイヤモンド編集部 松野友美)
被害者であるはずのJR東海が
星取表のきっかけを作った
「ゼネコン各社がどの工区について東海旅客鉄道(JR東海)から技術検討の依頼を受けていて、どの工区を営業しているのか。また、JR東海はどこに発注しようとしているのか。整理するための資料を作ってほしい」
2013年8月ごろの夏休み明け、大成建設のリニア中央新幹線工事に関する土木営業本部の副本部長で統括営業を担当していた大川孝執行役員(当時)はこんな依頼を受けた。
依頼してきたのは、発注者であるJR東海側のN氏(故人)だ。N氏はJR東海で企画推進部担当部長としてリニアの全体計画や対外的な交渉など実務部隊のトップを担ってきた経歴を持つ。当時は転籍したJR東海子会社のジェイアール東海コンサルタンツ(JCC)で取締役を務め、同社はJR東海からリニア工事の事前調査を委託されていた。
大川氏はN氏からフォーマットを手書きした紙を渡された。そこにはJR東海が計画するリニア工事について、「工区の名称」と「キロ程(長さ)」が書かれていた。