一審の大阪地裁も二審(控訴審)の大阪高裁も、国の責任を認め、原告勝訴の判決を出した。しかし、最高裁が、「控訴審判決の破棄・差し戻し」の判決を下し、差し戻し控訴審の大阪高裁が原告敗訴を言い渡した。原告は最高裁に再上告したが棄却された。

 最高裁判決は、河川は、道路などと根本的に違って自然条件などの制約が多いうえ、河川整備には財政的制約などがあるため容易には行政責任を問えないという考え方に立つ。

 そのうえで、河川管理の瑕疵の有無は、河川管理の特質に由来する財政的・技術的・社会的諸制約のもとで判断すべきであるとし、瑕疵が認められるのは、改修計画が格別不合理なものと認められる場合などに限られるとした。

 つまり瑕疵を認めるハードルをきわめて高くしたわけだ。

 この結果、被災住民が裁判に訴えても、よほどのことがない限り、河川管理に瑕疵があったとは認められなくなった。それまでは被災者が勝訴する判決が一審や二審では出ていたのに、これ以降はほとんどが敗訴する「冬の時代」が続いている(特殊な事情があった「多摩川水害訴訟」は原告勝訴)。

堤防強化や河道の浚渫
「先送り」を許すことに

 この最高裁判決は国や自治体の河川行政にどんな影響を与えたか。

 ダム問題に長年取り組んできた嶋津暉之・水源開発問題全国連絡会共同代表は、「財政難の中で河川改修を先送りしても責任は問われないことを前提に、堤防の強化や河道の浚渫(しゅんせつ)といった、洪水防止に真に必要なきめ細かい対策を先送りするようになった」と話す。

 そうした中で熊本地裁は、市町村が管理する小河川である水路についてではあるが、行政の瑕疵を認める判決を出した。

 これについて原告代理人の板井俊介弁護士は、「行政の河川管理における瑕疵を一部ではあっても認めた点で、画期的な判決だ」と評価し、熊本市に対し、該当水路や他の農業用水路で被害が起きないよう、ただちに対策をとることを求めている。

 また今本教授は、「この裁判で行政の河川管理の技術レベルが低いことが明らかになった。判決を機に、国も自治体も危機感をもって被害の発生を防ぐことに真摯に努力してほしい」と話す。

増える台風、集中豪雨被害
損害賠償訴訟にも影響?

 今回の熊本地裁の判決が注目されるのは、毎年のように起きる河川災害の被災者たちが相次いで、国や自治体に損害賠償を求める裁判を起こしているからだ。