“大恐慌”に匹敵する
世界経済の落ち込みリスク

 グローバル化の反動によって、今後、世界経済は1930年代に米国を中心に発生した“大恐慌”に匹敵する落ち込みを迎える恐れがある。前述したように、トランプ政権は中国がウイルスを世界に拡散させたと非難している。コロナ禍による中国経済の減速から、第1弾合意にまとめられた米国の農畜産物などの輸入目標も達成が難しい。状況によっては、大統領再選を狙うトランプ氏が中国にさらなる圧力をかけ、サプライチェーンの混乱などグローバル経済の寸断が深刻化するリスクは軽視できない。

 一方、米国を中心に企業経営は非常事態に突入しつつある。米金融大手のJPモルガンは深刻な景気後退に備え引当金を積み増し始めた。この対応は、4〜6月期の米実質GDP成長率が前期比年率で25%落ち込み、失業率は10%に達するシナリオに基づいている。

 問題は、感染終息にどのくらいの時間がかかるかが読めないことだ。現在、米労働市場は過去に例を見ない勢いで悪化しており、企業業績が想定以上に悪化するリスクは高まっている。仮に経済活動が再開されたとしても正常に戻るにはかなりの時間がかかる。早期の経済活動再開が、感染を再拡大させるリスクもある。

 そうした中で株価が反発していることは冷静に見るべきだ。先が読めないため、多くの投資家のリスクに対する忌避感はかなり強い。日米の国債価格の不安定さはそれを示す材料の一つだ。米国では一部の投機筋が急速に株式のショート(空売り)ポジションを巻き戻し、それにつられた投資家が株を買い、株価上昇が支えられている面もありそうだ。

 一方、多くの市場参加者は、グローバル化の反動や大恐慌以来の景気後退に落ち込むリスクに目をつぶりたいと考えているようにみえる。そのため、市場参加者は先行きの明るさを求めて、目先の経済活動再開に向かっているとも考えられる。

 しかし、現実には、今後、世界経済の落ち込みはより深刻化する可能性が高い。グローバル化の反動の先に、世界経済に大きな変化が出始めていることを虚心坦懐に感じ取る必要がある。今は、そうした視点で世界経済を謙虚に考えるべき時だ。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)