日本政府が「ケチ」という印象を
持たれてしまう理由

 結局日本の問題は、現金給付が「Too Little, Too Late」というよりも、むしろ制度設計がしっかりし過ぎているが故の厳しさにあるように思う。現金給付の所得制限基準が厳し過ぎたことで、普段税金を払っていない層だけが受給できる一方で、税金を払っている層には何も恩恵がないことが強い不満となる。これは、平時の「生活保護」に対する批判と同じ構図であり、社会の「分断」を生みかねないものである(第129回)。
    
 また、繰り返すが「自分が支給対象なのか分からない」「いくらもらえるか分からない」「そもそも制度が分からない」という「分かりにくさ」が、特に問題である。それにもかかわらず、安倍首相や閣僚が、優秀な官僚が書いた「丁寧過ぎる説明」を棒読みすることしかできない。制度をよく理解して「要するにこうだ」と明確に国民に対して示す能力がない。「逆学歴社会」の弊害だろう(第233回)。さらにいえば、首相や閣僚の言葉に「信頼」がない(第234回)。だから、分かりづらい説明に国民がいら立ってしまうのだ。

 一方、英国など欧米諸国は日本と対照的に、制度自体が単純で条件を付けることなく現金をポンッと渡す感じだ。その上、ボリス・ジョンソン英首相の言葉が明快で力強い。「一緒に戦おう、頑張ろう」と国民に呼びかけ、国民もそれを熱狂的に支持している。こういう芸当ができるのは、日本の政治家とは修羅場のくぐり方が違うからだとしかいいようがない(第228回)。

 その結果、欧米と日本の制度は一長一短であり、家計支援については現時点で日本の方が明らかに充実しているにもかかわらず、日本政府は「ケチだ」という印象を持たれてしまうことになっている。

緊急経済対策で繰り広げられた
「予算分捕り合戦」にめまい

 日本の現金給付については、内容よりも国民に対する「見せ方」の問題が大きいといえる。しかし、緊急経済対策に含まれるそれ以外の施策には、より深刻な問題があるように思う。

 緊急経済対策で並べられた施策の数々を見れば、いつもの永田町・霞が関の「予算分捕り合戦」が繰り広げられていたことが容易に分かる(第117回)。それは、国民の厳しい批判で撤回に追い込まれた「お肉券」「お魚券」に典型的にみられるものだが、それ以外にもいろいろある。以下、列挙する。

「マイナポイントにキャッスレスの推進・拡充」「旅行代金の割引助成」「商店街活性化事業」「観光・消費の国民的キャンペーン」「企業および地方自治体における在宅勤務、テレワークの導入を促進するための取組の推進」「一人一台端末の前倒し整備」「学習データ基盤の健闘」「遠隔教育による家庭・学習環境の整備」「遠隔教育に不可欠な著作物利用の円滑化」「GIGAスクール構想の加速・拡充」「遠隔医療・遠隔薬剤処方等の促進」「デジタルガバメントやキャッシュレス社会の実現」「スマートシティの推進」「5Gインフラの早期全国展開」「デジタル遷都」などである。