著名投資家ピーター・ティール氏が共同で創業したデータ会社パランティア・テクノロジーズは、新型コロナウイルスの感染流行をいち早く察知し、多くの企業に先駆けて国外駐在員を帰国させた。ここ数週間は、こうした知識を活用して世界各国の政府が感染状況を追跡するのを支援し、役割を拡大させている。
だがそれだけでは、事業への打撃を和らげるには十分でないかもしれない。法人顧客による支出削減が事業を圧迫し、パランティアは大規模なコスト削減計画や新規株式公開(IPO)のさらなる先送り検討を余儀なくされている。事情に詳しい関係者が明らかにした。
関係者によると、詳細な位置追跡ツールを構築する政府の要請に関し、社内では慎重な意見も出ている。そうした位置追跡ツールは、ティール氏が支持を明言する自由至上主義的理念に逆行するものだからだ。
パランティアは米疾病対策センター(CDC)と長期契約を結んでおり、同社上層部は今年初め、機密扱いのモデル作成に関わったという。モデルでは、感染が急速に拡大する可能性が示された。パランティアは2月中旬、外国から社員を帰国させ、4週間の隔離を指示した。
多くの大企業が同様の対策を確立したのは、そのかなり後のことだ。米政府機関は市民にリスクの高まりを警告したが、パランティアはおおかた先回って動いていた。同社の広報担当者は「公開情報のみに基づいて行動した」と述べている。