“あれ”とは1週間ほど前、テニスをしていた時のことだ。プレー中、肩に違和感を感じ、動かしにくくなった。特につらいのはサーブで、打つたびに肩の前側に鋭い痛みが走った。我慢して打つと、今度はラリーがつらかった。フォアでもバックでも痛い。

「ごめん。肩を痛めたみたいだ。申し訳ないが今日はこれでやめにするよ」

 ゲームを途中で切り上げたいと告げると、若いテニス仲間が心配そうに声をかけてきた。

「大丈夫ですか。痛いですか」

「あぁ、なんかいきなり痛くなっちゃって。ちょっとこう、肩関節がスムーズに動かない感じがするんだよね。もうすぐ大会があるから休みたくないんだけど。悪化させたくないからな」

「それ、五十肩じゃないですか」

「あぁ、確かにそうかもしれないな。俺もちょうどそんな年齢だしな」

 自分では、肉体年齢は30代のつもりでいたが、やはり年相応に老化しているのかもしれない。痛む肩をかばいながら愛車を運転し、帰宅した。

「動かしたほうがいい」
助言に従い悪化

 ヤスオさんはグラフィック・デザイナー。アシスタント4人と事務員1人の小さな会社を経営している。クライアントに恵まれ経営は順調だが、ワンマンな性格のせいか任せられる社員が育たない。ヤスオさんなしには、仕事はぴくりとも進まないのだ。

 肩を痛めた翌日も早朝から出社し、ラフスケッチを描き起こし(パソコンが苦手なので手描きだ)、指示を出しまくる。合間にサーブを打つ真似(まね)や腕を上げる動作を試みては、(やっぱり痛い)と落胆した。

 昼休み、事務員の女性に「五十肩かもしれない」と打ち明けると、健康オタクの彼女は目をキラキラさせて言った。