街の雑踏や工事現場の作業音、近隣住民の生活音など、私たちは音に囲まれて生活している。そのなかにストレスを感じる騒音があっても「少しうるさいけど我慢しよう…」と、諦めている人がほとんどかもしれない。しかし、騒音によって感じるストレスを放置すると、思わぬ病に倒れる可能性があるという。(清談社 真島加代)

心臓の酸素不足によって
起きる「虚血性心疾患」

過度な騒音は、高血圧や心疾患につながるおそれがあります
昼間に騒音にさらされると、夜になっても興奮状態が収まらず、「イライラして眠れない」というストレスを抱えることもある Photo:PIXTA

 2018年、世界保健機関(WHO)が発表した「欧州環境騒音ガイドライン」(*)が注目を集めた。そこには“過度な騒音は、高血圧や心疾患につながるおそれがある”という調査結果が示されており、騒音ストレスと心疾患の関係を指摘している。
(*)…Environmental Noise Guidelines for the European Region

「心疾患のなかでも、心筋梗塞や狭心症などの『虚血性心疾患』はストレスとの関係が深い病です。最悪の場合、不整脈による心停止や虚血性心不全を発症して死に至ります。もちろん、年齢の問題や生活習慣など、心臓を養う冠動脈の動脈硬化を進める、さまざまな要因が絡んで発症しますが、騒音によるストレスが原因のひとつになることもありますね」

 そう話すのは、池谷医院院長の池谷敏郎氏だ。池谷氏は「血管の動脈硬化が進んでいる人は、虚血性心疾患の発症リスクがとくに高い」と話す。

「生活習慣病の放置や喫煙、強いストレスなどの悪い生活習慣を続けると血管の動脈硬化が進みます。動脈硬化が進んだ血管の内側の壁には『プラーク』と呼ばれるコブができます。血圧の急上昇によって、この『プラーク』に傷がつくと、血小板という細胞が集まって固まり、『血栓』という血の塊を作ります。この血栓は、血液の通り道である血管の内宮を詰まらせる原因になるのです」

 もしも心臓に血液を送り込む「冠動脈」に血栓ができると、心臓に十分な酸素や栄養が行き届かなくなってしまう。その結果、心臓の細胞が壊死する「心筋梗塞」を発症するケースがあるのだ。

「ストレスを感じると、『ノルアドレナリン』『アドレナリン』などのストレスホルモンが分泌されます。これらのホルモンにより交感神経が刺激され、心拍数が増えて血圧が急上昇します。さらに、交感神経の緊張は血小板を活性化して、血栓を生じやすくさせるのです」

 また、交感神経が緊張して心拍数が増えると、心臓はより多くの酸素を必要とする。しかし、心臓を養う冠動脈の動脈硬化が進んでいると、酸素や栄養が心臓に十分に行き渡らなくなるという。

「心臓における需要と供給のバランスが崩れると、胸痛や息苦しさを伴う『狭心症』を発症します」