肩こり肩こりには、思いもよらない怖い病気が隠れていることがあります Photo:PIXTA

 現在、日本では多くの人が肩こりや首の痛みに悩まされており、およそ毎年3人に1人に症状が現われていると言われています。

 半分の人は2ヵ月以内に治りますが、半分は1年たっても治らなかったり、痛みを繰り返したりします。その症状や経過によっては、レッドフラッグ(見逃しては行けない病気)に繋がる可能性もあり、放置するのはとても危険です。 

 そこで今回は、首の痛みや肩こりに現れる怖い病気をいくつかご紹介したいと思います。

「ひどい肩こり」と思っていたら
関節リウマチだった!

 50代の女性が首の両側に強い痛みを感じ、私たちのペインクリニックにいらっしゃいました。

 仕事は事務のため1日中パソコンを使っていて、プライベートでは親の介護をしています。2年前から肩甲骨の内側にコリや痛みが出現し、病院をいくつか受診したそうです。内服薬、湿布のほか、注射も受けたようなのですが、効果は一時的。そんなある日、首を少し動かすだけでも痛みを感じるようになったため、お越しになりました。

 頚椎(けいつい)のレントゲンを撮影したところ、「ストレートネック」よりもひどい状態でした。「ストレートネック」とは、通常、前にカーブしている首の骨が何らかの原因でまっすぐになってしまっている状態のことです。このストレートネックは、肩こりや首の痛みはもちろん、ひどくなると頭痛や吐き気などの不調を引き越します。しかし、この患者さんはまっすぐを通り越して、後ろにカーブを描くような骨の配列になっていました。

 はじめに見たところでは、痛みの主な原因は頚椎の変形による関節の痛みと考えました。

 しかし神経ブロック(注射)を行っても数日しか効果はありませんでした。そして、ある日「朝、手がこわばる」と話してくださったため、関節リウマチを疑って治療計画を変更したところ、痛みは改善。もともとあった肩こりも弱いものとなり、湿布のみの治療となりました。首の痛みや変形の裏に「関節リウマチ」が隠れていたのです。

 関節リウマチとは、30~40歳代の女性に多く発症し、関節が破壊されることで体の機能を妨げてしまう病気です。最初は両方の手や足の指の関節が対称的に腫れて、とくに朝、こわばるようになります。

 関節症状に加えて貧血や微熱、全身倦怠感などの全身症状を合併することもあります。もっとも怖いのは、首の一番上の部分で背骨が前にずれてしまい、脊髄が圧迫され、手足が麻痺したり、呼吸がしにくくなったりする場合があることです1)

 肩こりだけで関節リウマチを疑うことはそうありませんが、朝に手足のこわばり感を自覚されたなら、関節リウマチの可能性があります。同様の症状があるようなら、整形外科またはリウマチ科を早めに受診しましょう。