世界各国の政府が3月に市民に対して巣ごもり生活をするよう告げた際、英ウェールズ在住のジェス・クリップスさん(30)は「ロックダウン(都市封鎖)中にしたいことリスト」を作成した。「ようやく、じっくりとかぎ編み針を学べる」。図書館のアシスタントとして働くクリップスさんはそう思ったという。さらにタマネギの酢漬けを作ることも計画していた。
だが、いまだにかぎ針を手に持ってもいなければ、タマネギを漬けてもいない。ウェブカメラがそれを阻んでいるからだ。
暇なロックダウン期間を利用して面倒なことに手を付けようという決意は果たされずにいる。新型コロナウイルスによる隔離で社会生活が中断されてしまったからではない。社会生活の場がオンラインに移されたためだ。
物理的な接触の中止によって、社会生活がかえって忙しくなった人たちもおり、そうした社交は避けるのが難しい。アップルのビデオ通話アプリ「フェイスタイム」を使用したテレビ通話から抜けたくても、「『夜は家で過ごしたいから』とは言えない」とクリップスさんは話す。
これまで一定の距離を保(たも)てていた同僚たちが今では、仕事終わりにビデオ会議アプリ「ズーム」を使用したリビングルームでの飲み会に誘ってくる。大学の友人からはオンラインでクイズチームに入ることを勧められる。コロナで中止になった読書グループやバレエ教室がビデオ会議システムを介して再開されている。