「夫に『君は誰のために生きているの?』と言われたんです。夫は、『俺は今まで自分のためだけに生きてきたけど、結婚してからは自分と君が幸せになるために生きている』って。ある意味、私は今までも自分のために生きてきたと思うんです。でも、それは自分の身を守るためであって、幸せのためじゃなかった」

 サトシさんは頑固な人でもあった。一度、自分が決めたことはなかなか曲げない。揺らぎやすいマキさんの指針になった。

 それは父の支配下で生きてきたことと変わらないのではないか、と思うかもしれない。しかし、父と夫の大きな差がある。それはマキさんを一個人としてとらえているか否か、だ。

「父にとって、私は父の所有物だった。でも、夫は私を一個人として見てくれる。私の話に耳を傾け、会話をしてくれる。命令するわけでもなく、対等に話してくれる。そんな当たり前のことが今までなかったんです」

夫婦2人の今の時間と
これから

 結婚して7年がたち、年も30代半ばになった。今でも、「子どもは産まないの?」「子どもいたほうがいいよ」と言われることがあるというが、気にならなくなったそうだ。

「子どもをつくらない理由が私の中ではっきりとしていますし、それで私と夫が幸せであればいいと思うんです。周りの声に押されて子どもを産んだとして、果たして子どもを幸せにできるのか、私たちも幸せになれるのか。産んでみなきゃ分からないだろうと言う人もいるでしょうが、最悪な幼少時代を送っている私からすると、そんな賭けはできない」

 今、マキさんは夫との老後までの時間をいかに楽しく幸せに暮らすかを考えるのが、生きる糧になっていると言う。

「いくつまで生きることができるかは分かりません。お互いが亡くなったときにどうするのか、ということも話し合っていかなければならない。でも、2人で一緒にいられる限りは、やりたいことは全部やろう、って話しています」

 2人だからこそ、過ごせる時間がある。それは2人が選んだ道で、誰の許可もいらないのだ。

>> 第2回目はこちら 夫が無職でパチプロ、妻がうつでも仲がいい「令和のDINKs」事情