(2)雇用レベルの変化
リスク回避のため安定志向が高まる?

 もう少し視点を下げて、雇用のレベルで見てみよう。どの程度まで不況が深刻化するかについては、いまだ予断を許さない状況だが、国際通貨基金(IMF)は日本の2020年見通しをGDPマイナス5.2%成長と予想した。

 日本の失業率は、昨年まで完全雇用とされるレベルの2.4%前後と極めて低い水準で推移していた。近年のピークはITバブル崩壊後の2002年夏とリーマンショック後の2009年夏で、それぞれ5.5%前後(労働力調査より季節調整値)だった。IMF予想程度のマイナス成長であれば、今後同程度かそれ以上の失業率になっていく可能性がある。関連して、自殺者の増加、経済格差の増大が見込まれ、これらは大きな社会課題として傷跡を残し続ける。

 特に、自殺に関しては、不況時において「経済・生活問題」を理由とする自殺者が増えることが統計的に知られている。2003年のITバブル崩壊後の不況では、「経済・生活問題」を理由とする自殺者が9000人近く記録されており、ウイルス感染による死亡者の数を上回る可能性が十分ある。医療崩壊を防げたとしても、家計崩壊を防ぐことができなければ、人命は多数失われてしまうということだ。

 次に、労働者マインドとしては、不況時にはリスク回避傾向が高まる。現在の企業にしがみつく安定傾向は高まり、上昇傾向が続いていた自発的な転職意向は低下する。ベンチャー・スタートアップ企業においても淘汰は行われ、起業の断念や撤退を余儀なくされる。こうしたリスク回避傾向が長く続けば、イノベーション産業にも影を落とし続けるだろう。

 また、失業にまで至らなくとも、従業員の賃金は低下する。日本企業は、国際的に見てもボーナスと残業手当の割合が高く、不況時にはこれらが人件費総額を下げるバッファとして機能する。収入が減った各世帯で家計補填のニーズは高まるため、人手不足の産業におけるパート・アルバイト・契約社員・派遣社員の増加が見込まれる。副業のニーズも家計補填においては上昇するはずだ。しかし、こうした雇用形態は賃金が低く不安定な雇用形態であることは間違いない。同一労働同一賃金の法改正もあり、正規社員と非正規社員の格差是正の潮流は今後も強化されていくだろう。