新型コロナウイルス向けのワクチン開発が加速してきた。米製薬大手ファイザーは治験の日程を前倒しし、今秋にも緊急使用が可能になるとの見通しを明らかにするなど、研究者や製薬会社の想定を上回るスピードで進んでいる。
ファイザーは28日、来週にも米国でワクチン候補の治験を開始すると発表。27日には、英オックスフォード大学の研究者らも、ワクチン候補が治験の審査に通れば、9月にも緊急利用が可能になる見通しとしたほか、米バイオテク企業モデルナは、ワクチン臨床試験の第2相試験(フェーズ 2)に入る準備を進めていると明らかにした。
製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)も今月に入り、ワクチン開発の通常工程を数カ月省き、9月にも臨床試験を開始するとし、2021年初頭にも緊急使用が可能になるとの見方を示していた。
ただ、ワクチン開発では、安全性の担保に向け、臨床試験で厳しい試練に直面するため、取り組みがとん挫する恐れもある。これまで有望視されていた多くの治療薬・ワクチン候補も治験で結果が出せず、失敗に終わった。米科学誌「プロス・ワン」に掲載された2013年の研究にると、ワクチンの開発には治験段階から平均で10.7年かかり、市場に出回る確率は6%だ。