医療崩壊はなぜ起きるのか
今回の分析で分かったその理由

 正直なところ私は、日本には過大な医療施設があるのに、感染症学者が医療崩壊の恐怖を盛んに警告することを不思議に思っていた。

 3月末における日本国内での感染者数は1887人、死者は56人にすぎなかった(厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について〈令和2年3月31日版〉」)。日本では毎年136万人が死亡している。そのうち9万5000人が肺炎で、3325人はインフルエンザで亡くなっている(2018年の数値、厚生労働省「人口動態統計」)。これまでに経験のない死は悲劇であるが、なぜ医療崩壊が起きるのかが理解できなかった。

 しかも、今年はインフルエンザ感染者が劇的に減少している。コロナの恐怖によって人混みを避け、手を洗い、うがいをしているからだ。医者にも行かない。病院が感染リスクの高い場所だと分かっているからである。

 従って、医療資源に余裕ができ、コロナ以外の感染者が減少し、日本の医療制度はうまく対応できると思っていた。しかし、以上の試算によって、爆発的な感染力を抑えない限り、いくら医療施設があっても対応できないということが理解できた。

コロナショックで明らかになった
日本の医療体制のゆがみ

 ただし、感染爆発を抑えることができた後では、あるいは同時に、医療資源の有効利用が必要である。コロナ感染症によって日本の医療体制のゆがみもまた明らかになった。

 よく指摘されるように、日本の病床数は世界的に見て多い。人口1000人当たりの病床数は、フランス5.98、ドイツ8.00、イタリア3.18、英国2.54、米国2.77であるのに対し、日本は13.05、韓国は12.27である(OECD HealthData2019)。

 財務省と厚生労働省は、世界的に見て異常に多い病床数を減らせと言っていたが、そうできなかったことがコロナ禍においては幸いだったと思っていた。普段なら無駄と言われていたことが危機時の助けとなり得る。日本の企業は、無駄に現預金を積み上げているといわれていたが、コロナの経済ショックに対してはバッファーになっているのと似ているかもしれない。