ミシュラン常連フレンチも
悩みは深かった
「渋谷はオフィス客や在住者がそんなに多くないのに飲食店は山ほどあります。デリバリーやテークアウトはもう大激戦で、夏のプールみたいな大混雑ですよ。素人のぼくらが乗り込んでいっても迷子になっちゃうだけ。応援プランも難しいと思っています。コロナとの戦いは長丁場になるので将来の売り上げを先食いするのは一時しのぎにしかなりません。未来につながる取り組みが必要なんです」
今、何ができるのか?未来につながる方法はあるのか?それを考え抜いた末に始めた取り組みが「ハコニワ支援プロジェクト」だ。1口3000円を支払うと、3食分の生パスタが支援者に郵送される仕組みだ。
「たんなる生パスタの通販という意識ではやっていません。支援者には生パスタに加えてオンラインコミュニティーに参加できるアドレスをお送りしています。支援者限定の楽しい動画でお客さんと強いつながりを持つ。そしてお客さん同士でも交流して楽しんでもらう。こういう、お店のファンを増やせる、お店とお客さんのつながりを強められる取り組みならば、未来への投資になると考えました」
2016年から現在まで、5年連続でミシュラン一つ星の評価を守り続けているフレンチの名店「ル・スプートニク」のオーナーシェフである高橋雄二郎さんも、コロナ禍下でも「未来につなげる」ことの大事さを説く。
「外食は家賃やスタッフの給与など固定費が高いんです。お店を開けなければ赤字は確定ですが、少しでも負担を減らすためには何かをやらざるを得ない。ただ、うちの店はオフィス街からも住宅地からも外れているのでテークアウトは厳しいと考えました。物販には興味はあったのですが、単価の安い商品を売るような量の勝負では疲弊するだけになっちゃいます。そんなとき、ある生産者の方から連絡をいただいたんです。食材が売れなくて困っているからなんとかできないかって」