土曜限定のぜいたく料理が
毎週完売の「ヒット作」に
高橋さんが始めたのは「シェフの気まぐれボックス」というサービスだ。2人分の料理を詰め合わせたセットの通販だ。販売は週に1度だけで、土曜日に到着するように配送される。ちょっとぜいたくな週末を自宅で過ごしてもらおうというコンセプトだ。限定数の販売だが(現在は40セット)、毎週完売しているという。
「気まぐれボックスという名前のとおり、お客さんはメニューを選べません。毎週どんな料理を作るかは生産者と話し合って決めます。生産者としっかり対話したいというのは前々からの希望でもあります。そのために今年4月からはランチをやめる予定だったぐらいです。売り上げがついてくれば理想ですが、赤字とはいえ、いい勉強の機会になっていると思います。
それから家族の時間を持てたことも大きいですね。毎日15~16時間働いて子どもと過ごす時間もほとんどなかったのが、今は夕方に帰宅して家族で夕食が食べられる。妻は『高いお金を払って、家族の時間を買ったようなものだ』って言っていますね」
冒頭のデータを提供したテーブルチェックはテークアウト、デリバリー受付、前売り応援プランの機能を飲食店に無償で提供している。同社の谷口優代表はこうした施策で飲食店がすぐに黒字化できるわけではないことを認めつつも、「出血を最小限に食い止めることが必要ですし、スタッフのモチベーションを維持し離職を防ぐためにも、ただ休業するのではなく、何かをやりたいというお店は多い。その支援になれば」と話す。
また、コロナ禍での新たな取り組みが未来への投資となる方法も考える必要があると指摘する。「お値打ちなランチでお店を体験してもらって利益率の高いディナーに来てもらうというのはよくあるやり方ですが、テークアウトで新規のお客さんに知っていただくというケースもあるようです。例えば、カウンターのお寿司屋さんはハードルが高いという方もテークアウトならば気軽に体験できますから。その意味ではコロナの影響が完全になくなっても、新規顧客獲得の導線としてテークアウトが残る可能性はあると考えています」
いかに未来につなげるか、この課題はIT企業のテーブルチェックにも共通しているという。「開発には人手と時間が必要ですが、どの機能を優先すべきかの計画を白紙に戻しました。予約や顧客管理を中心とした機能開発を進めてきましたが、これからはテイクアウトや新規顧客獲得のための機能開発を優先する必要があると考えています」
テーブルチェックは4月16日にテイクアウト、デリバリ―受付、前売り応援プランの3機能をリリースしたが、いずれも新型肺炎流行以後に緊急開発したもの。さらに5月12日にフェイスブック傘下の画像SNSインスタグラムは、飲食店のアカウントからデリバリー注文やギフトカード購入ができる機能追加を実施したが、出前館などともにテーブルチェックもパートナー企業として協力している。こちらも突貫工事での実装だったという。
「4月21日から国土交通省の特例措置によってタクシーによる貨物配送が認められましたが(9月末までと期間は限定されている)、タクシーを使ったデリバリーについてもも検討しています。ともかく、状況に合わせて柔軟に変化していくしかありません。経営者としては大変難しい局面ではありますが、このカオスな状況を楽しんで乗りきるしかないと腹をくくっています」