散弾銃戦略のベースは組織づくり

池田純
横浜DeNAベイスターズ初代球団社長の池田純氏

 イノベーションを起こすために重要なのは散弾銃戦略の方で、これはゼロから何かを生み出すいわゆる「ゼロイチ」の取り組みです。一方の順繰り戦略は、そうして生まれたものを大きく育てていくいわゆる「イチ百」の取り組みです。「イチ百」は従来の業界のルールの中で実現することも可能ですが、「ゼロイチ」は業界の常識からは生まれません。だからこそ、散弾銃戦略は外部から来たプロ経営者が得意とする戦略なのです。

 散弾銃をランダムに撃つ、と言いましたが、撃つ方向を定めることは必要です。ベイスターズの改革の場合、それは「プロ野球をエンターテインメントにする」という方向性でした。「プロ野球」というマーケットの周りには、家族イベント、シーズンイベント、飲食といった別のマーケットが隣接しています。ビジネスのスコープをそこまで広げれば、ベイスターズは「プロ野球の会社」ではなく「エンターテインメントの会社」だということが見えてきます。そうした発想から生まれたのが、「プロ野球をエンターテインメントにする」という方向性です。これは、野球にこだわる業界人からは生まれない発想です。

 散弾銃戦略をスタートするに当たっては、こうした発想の転換を含め、数を撃つ方向を見定めることが重要となります。

 また、散弾銃は数多く撃つべきですが、それぞれの弾を「撃ちっ放し」にしてはいけません。撃った後の成果をトレースし、PDCAサイクルを回して、どれが順繰り戦略に乗るかを見極める必要があります。つまり数を撃つということの意味は、PDCAサイクルを同時多発的に「ぶん回す」ことで、順繰り戦略に向けた知見を最適に獲得することに他ならないのです。

 組織の中に抵抗勢力がいると、それが思うように進みません。また、散弾銃を撃つということは新しいチャレンジをするということなので、情報統制も必要になります。だから散弾銃戦略のベースになるのは、何よりも組織づくりなのです。

企業変革の「打率」は1割でいい

 野球では、3割打てれば一流といわれますが、経営では1割当たればいいと私は考えています。10の打ち手のうち、当たるのは1つでいいということです。9割は失敗ということになりますが、1つの成功体験は9つの失敗に勝ると私は思っています。

 例えば、コンビニエンスストアには、年間1万7000点くらいのお菓子が並ぶといわれています。その中で、10年後にも残っているのは1割にも満たないでしょう。ヒット商品が生まれるのはせいぜいそのくらいの確率ですし、失敗した商品はすぐに忘れられてしまうので、失敗を気にする必要はないのです。