的に当たったアイデアが1つあったら、それを順繰り戦略に乗せて確実に成長させていきます。逆に的に当たらなかったアイデアは、芽が出ないと分かった時点で早々に諦めることが大切です。その代わりにスピードを最優先にする。完璧主義や安全第一の考え方が日本企業の特徴ですが、完璧に誤りのないように物事を進めていこうとする姿勢は、変革のスピード感を損なうものとなります。むしろ、変革には常に失敗を織り込んでおくべきだと思います。

 重要なのは、1割の確率で当たった案については、絶対に大きく成長させることです。私はその取り組みには経営者自身がハンズオン(現場主義)で参加すべきであると考えています。そして確かな成功例を作り、その達成感をチームのメンバーと共有すべきであると考えています。それによって、メンバーが抱いていた「変わることの怖さ」が「成功することの面白さ」に変わり、その経験をした人たちが社内における「変革の伝道者」になってくれるからです。変革の1つの成功体験は、必ず次の変革に結び付きます。その流れをいかにつくるかにこそ、プロ経営者は手腕を問われるのです。

方法論とは打者にとっての「スイング」

 私はベイスターズの改革をこれらの方法論によってある程度成功させることができましたが、この方法論はもちろん企業や業界が変わっても通用すると考えています。企業や業界ごとに改革の文脈は異なりますし、情報を集める方法も異なります。しかし、異なるのはそれくらいで、求められる変革の「構造」自体はどの企業、どの業界にも共通しています。必要なのは、組織づくりとマーケティング、そして散弾銃戦略と順繰り戦略。それらがほぼ全てといっていいでしょう。

 プロ経営者が成功するかどうかは、ひとえにこのような実績に基づく成功方法、方法論を持っているかどうかに懸かっていると私は考えています。方法論とは、プロ野球選手にとってのバットのスイングのようなものです。常に一定のフォームのスイングを心掛けながら、ピッチャーが投げる多様な球種や球筋に対応していくのがプロのバッターです。スイングの質が一定だからといって、常にヒットやホームランが打てるわけではむろんありませんが、トータルで見ればある程度の結果を出すことができる。それがプロです。

 以前、元サッカー選手のジーコ氏とブラジルで対談したことがありました。私が「プロにとって大事なことは何ですか?」と聞いたところ、彼は「クオリティーだ」と答えました。一定の質を保ち、それによって安定的な結果を出せる人がプロであるということです。100%の成功を狙える魔法のような方法論はありません。しかし確かな方法論があれば、クオリティーを保つことができるし、成果を残すことができるのです。

プロ経営者の引き際

 プロ経営者は「雇われ社長」であり、雇用期間には満期があります。その期間はケースによってまちまちですが、カルビーなどの再生を成功させたプロ経営者である松本晃さんは、このサイトでの対談の際、「最低6年、理想的には8年」とおっしゃっていました。私がベイスターズの社長だった期間は5年間ですが、確かに「もう少しできれば」という気持ちはありました。

 雇用期間が限定されていることには、2つの意味があると私は考えています。1つは、プロ経営者自身が「飽きる」ということです。改革案を次々に繰り出していって、そのうちの幾つかを成功させ、組織の再生の道筋が見えてくる。それが達成されると、その後の取り組みは「変革」から組織の「管理運営」のフェーズに入っていきます。そこまで全力を尽くしてしまえば、待っているのは「飽き」です。「燃え尽きる」と言っていいかもしれません。そうなった時点で、プロ経営者は去るべきです。